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057:私のいないところで
「貴女は、あの時の……」
「はい! エレスティーナ様に助けていただいたジョゼフィーヌです!」
なるほど。でもなぜ今になって。
私が疑問に思っているとセルリアル辺境伯が言った。
「さぁさぁ。食事にしましょう。話はその時にでも」
とりあえず私は席に着くことに。隣にランツが座る。
それからしばらくは食事だ。
「マナーは気にせず食べてくれ」
辺境伯の言葉に甘える形で、ランツ達が食べ始める。
うん美味しい。
ある程度、落ち着いた頃。セルリアル様が口を開いた。
「さて。この度は本当にありがとう。この件ではカラモルト侯爵家にも抗議を入れさせてもらったし、グレイセント家に落ち度はなかったことも周知させた。なので中央は今。混乱中だ」
私は先程から気になっていたことを尋ねる。
「何故今になって?」
「それは……」
するとジョゼフィーヌが口を開いた。
「私がいけなかったんです」
そう言って事情を話してくれる。
「醜聞と怖さがあって父にも言わなかったんです。でも先日。エレスティーナ様の手配書を見る機会があって、これは逃げ隠れしてちゃいけないって。それで父に言いました」
セルリアルが言う。
「それを聞いて私は行動を起こしたんだ。話を聞いてみると北に逃げたという。なら国外か。もしくは私の所で留まっている可能性を考えて……いちおう錬金術ギルドにも問い合わせたという感じだね。グレイセント家は錬金術に明るいしエレスティーナ殿ももしかたらと思って。そうそう新人の子。ネローネといったかな。怒らないでやってくれ。彼女には事情を話してから聞き出したから」
なるほど。そんな事になっていたのか。セルリアルはさらに。
「君たちが逃亡の際に兵士を殺してなかったのは助かったよ。君たちに非がないことを証明するのに一役買ったからね」
私はホッと胸をなでおろす。そうか。その選択は正しかったんだ。セルリアル様は更に私に言った。
「さて。今なら貴族に戻れるがどうするね?」
「え。戻れるんですか?」
「あぁ。カラモルト侯爵家に比があっての騒動。グレイセント家には何の落ち度もなかった。なら、もうエレスティーナ殿を追放する理由はない、というのが理由だね」
だが、私は即答する。
「せっかくの話ですがお断りします」
「おや。いいのかい?」
「仲間も居ますし、その……恋人もできましたから」
「なるほど。それなら戻る理由もないね」
隣でランツが感動している。セルリアルはさらに。
「件の不正をしたと噂のオレクレアル・チャンバー男爵だが、こちらもエレスティーナ殿の手配書を取り下げたそうだよ。さらに今は社交界でも総スカンだそうだ。男爵位の取り下げも検討中だとか噂があるな」
おぉ。話がそこまで進んでいたなんて。
私の知らないところで問題解決!
まぁでもいっか。正すべく所が正されれば。
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