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「さよなら、誰か知らない人」
夏美は男性に聞こえないように呟いてから、5千円札を机の上に置いて部屋を出た。
「彼はまだ寝ているんですけど、私は仕事があるので……」
夏美はドキドキしながら、フロントマンに声をかけた。
「精算はその方にして頂けるのですね」
夏美が「はい」と答えると、フロントマンは「承知しました」とだけ答え、すぐに次の人の手続きを始めた。
良かった。でも、このホテルから出るまでは油断しちゃいけない。
慎重に、だけど速足で。
夏美はホテルを出て、駅に向かう。
駅に着くと、やっとほっとすることが出来た。
今日は日曜日。夏美が働いているIT会社は休みだ。
夏美は恋人の敦と同棲しているマンションに帰りたくないと思った。
だけど、二日酔い疲れているから、友だちの家に行くのも面倒臭い。
夏美は駅でしばらく悩んだ後、敦と同棲しているマンションに帰るために、電車に乗り込んだ。
敦の浮気の証拠は、真紀が見せてくれた写真だけだ。敦は本当に浮気をしていたのかな?
写真を見た時はショックと怒りで、敦を信じる事が出来なかったけど、敦は浮気をする様な人じゃないはず。
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