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その日、帰宅したナターシャは兄にパーティーのパートナーを頼んだ。社交の場があまり得意でない兄は渋ったが、父に一喝されて承諾した。
「卒業パーティーに相手がいないなんてねえ。私の娘時代には考えられないわ」
娘が失恋したとは知らない母は、傷口に思い切り塩を塗ってくる。
「社交界に出たら良さそうな人を早く見つけなさいね。見つからないようならお見合いですよ」
言われなくてもわかっている、と思った。たぶん地方の男爵家に嫁ぐことになるだろう。
(王都の社交界からは距離を置いた方がいいのかもしれないわね……)
昨日の高揚感とはうってかわった今日の切なさに、眠れないまま夜は更けていった。
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