4

3/3
295人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 その日、帰宅したナターシャは兄にパーティーのパートナーを頼んだ。社交の場があまり得意でない兄は渋ったが、父に一喝されて承諾した。 「卒業パーティーに相手がいないなんてねえ。私の娘時代には考えられないわ」  娘が失恋したとは知らない母は、傷口に思い切り塩を塗ってくる。 「社交界に出たら良さそうな人を早く見つけなさいね。見つからないようならお見合いですよ」  言われなくてもわかっている、と思った。たぶん地方の男爵家に嫁ぐことになるだろう。 (王都の社交界からは距離を置いた方がいいのかもしれないわね……)  昨日の高揚感とはうってかわった今日の切なさに、眠れないまま夜は更けていった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!