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あなたの顔になりたい。その顔を見れば、だれもが一目置き、尊敬と憧れのまなざしを向ける。わたしもその一人であった。
あなたが笑顔を向ければ、だれもが幸せな気持ちになった。日ごろの疲れも一瞬で吹き飛んだ。わたしもその一人であった。
あなたの怒った顔は愛嬌に満ちていた。怒りの中に愛があり、心に響くものがあった。わたしもそれを感じる一人であった。
ああ、あなたの顔になりたい。あなたの顔になりたい。あなたの顔が欲しい。欲しい。なりたい。なりたい。あなたの顔に。
あなたの顔になった。金と整形美容の力を使って。みんなの憧れの、あなたの顔。鏡を覗けば、その顔がいつも眺められる。
あなたの顔になれた。見渡せば、あなたの顔が並ぶ。あなたの顔に羨望を抱いていたのは、わたしだけじゃなかったみたい。
あなたの顔はそこかしこにある。なのに、あなたの顔の向こうには、あなたを見つけられない。あなたの顔だけがあるだけ。
気づけば、本当のあなたはどこにも見当たらない。あなたの顔はみなを狂わせる。世界中の人々があなたの顔になっていく。
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