芽生え

1/7
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ

芽生え

 僕の名前は木村春希。  生まれてからすぐにはわからなかったけど、保育園の年中くらいに男の子と女の子で分けられて生活をしている事を認識した時、僕って男の子だったの?って気付いた。  おもちゃ、アニメなど自分の好みの物を楽しんでいると、必ずと言ってもいいくらい言われた。 「もっと男の子らしくしないとね」  当時の僕はその「男の子らしく」の意味が分からないまま、自分の事を(ぼく)と呼ぶと教えられた。  ともだちはわたしっていってるよ?  小学校に入る時に選ばせてくれたランドセルの色は赤やピンクでなく、当たり前の様に黒や青。  ペンケースはかわいいキャラクターの物でなく、スポーツブランドなんかの物を持たされた。  服もかわいいデザインよりカッコいいといった雰囲気の物ばかり。    その頃には何故、好きな物を持たせてくれないのか、着させてくれないのか、上手く言葉には出来ない質問をして親を困らせた事もあった様だ。  高学年になるとさすがに自分は男の子である事は理解していたけど、みんなと何かが違うと感じていた。  その頃は女の子の友達が多かったものの、男の子の友達もいて、その頃はゲームやアニメも男女の流行りにそれ程差はなかったので特別気にする事はなかった。  でも友達には僕の心の内を相談するような事はしなかった。  これが当たり前だと思っていたから。  感じていた違和感も当たり前になっていた。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!