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プロローグ 狛犬の狛子
ここは、ならまちの古い街並みを残した一角にある小さな神社。
「美味しい食べ物がたくさん食べられますように。わたしの夢が叶いますように。神様どうぞよろしくお願いします」
髪の毛を高い位置でポニーテールに結わえた女の子が神社の拝殿に向かってお祈りをしている。
「あの子の声大きいよね」
「そうだよね。お祈りは心の中でするものだと思うんだけどね」
「あ、いけない。お賽銭を入れるの忘れていた~」
女の子は賽銭箱にお賽銭を入れて二度お辞儀をする。それからパンパンと柏手を激しく二回打った。
「柏手を打つ音もめちゃくちゃ大きいよね」
「あれじゃあ神様もびっくりしちゃうよね」
「うふふ、これで良し。完璧だね」女の子は自信ありげに歩き出した。
鳥居をくぐり神社の外へ出たポニーテールの女の子は神社に向き直りぺこりとお辞儀をしそれから再び歩き出した。
わたしは、女の子のさらさらと風に揺れるポニーテールをじっと眺めた。あ、それと、あれは! と思ったその時……。風がヒューヒューと強く吹いた。
「ホホッ~。なかなか良いお嬢さんじゃないか。まあ、ちょっと騒がしいけどな。狛子に狛助よ。見習わないとな」
「あ、神様」
「あ、神様だ~」
そうなのだ。神様がわたし達の目の前に厳かな空気に包まれ姿を現したのだった。
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