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「森下君、もし行くなら『赤いものに注意』だよ」
安部はそう謎のような言葉を残して、学食を出ていった。
(なんだそりゃ?)
その夜の合コンは五対五で、女の子は可愛い子ばかりだった。僕は安部の忠告を忘れず、赤いバッグを持っている子、赤いカーディガンの子、そして真っ赤な口紅の子を避けて座った。
僕の前の女の子は飯田恵さんといい、可愛くて優しそうで、訛りが抜けず話し下手な僕の話も一生懸命聞いてくれた。
「もしかしたら……」
うまくいくかもと期待してしまった。
合コンは盛り上がり、二次会はカラオケへ。そしてお開きのあとは、飯田さんと帰る方向が一緒になり、二人きりで電車に乗った。降りる駅は、僕の方が二つ先だった。
なんとかメッセンジャーアプリのIDを交換するぞと張り切ったけど、なかなか言い出せないうちに彼女が降りる駅に着いてしまう。
思わず、「遅いから、家まで送るよ」と、一緒に降りてしまった。
「え? いいの! 嬉しい!」
嬉しそうなその笑顔に僕はキュンとしてしまう。
飯田さんは駅から10分ほどの実家で家族と暮らしているという。二人で駅から歩くと、人通りが段々少なくなり、遅いのもあるのか5分も歩くと他に人はいなくなった。
「ほら、あの鳥居のところを曲がったら家なの」
少し先に神社の赤い鳥居が見えた。
(ん? 赤?)
嫌な予感がした。
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