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姫様っ⁉ ハレンチです!
庭を突っ切って来た瑛は、図書館の前でリュークを発見した。入口の前の階段に座り込んで、茶色の子犬とじゃれている。リュークの犬かと尋ねれば、違うと言う。龍宮に住みつている野良犬らしい。
「それで、何してるの?」
「トキに用事があるんだけど、紫苑のねぇちゃんが一緒でさー」
「リュークって、紫苑さん、苦手なの?」
「だってさー、ここだけの話、紫苑のねぇちゃんって、すっげー、怖いじゃん」
「へぇ。リュークって、怖いものなしだと思ってたけど」
意外と、瑛は笑って、そのまま、中に入ろうとしたが。一歩、踏み出したところで、ちょっと待てと、リュークに腕を引かれた。
「瑛は行ったらダメだろ!」
「何で?」
「何でって、トキと紫苑の姉ちゃんが、一緒にいるんだぞ? そこに瑛が行ったら、修羅場が起きるだろーが!」
「本を返すだけだよ」
まさかと笑う瑛に、リュークが目を吊り上げる。
「あのなー! 瑛とトキも、おしどり仮面の夫婦だろ! 夫が他の女とよろしくやってるところに、妻が現れると、もれなく修羅場が勃発するんだよ! 血で血を洗う抗争になるんだぞ!」
修羅場なんて、そんなことになるわけがない。瑛はそう思っていたけど。
「とにかく! 『混ぜるな、危険』だ! こっから先は行かせらんねー!」
あまりにも、リュークが必死に言うものだから。分かったと、うなずいてしまった。さらには、鉢合わせすると危険だからと、促されるまま、移動する。その道中、瑛は尋ねてみた。
「リュークは、リコさんって人のこと、知ってる?」
同じ質問をメグムにもしていたが、彼にはさらりと、はぐらかされてしまった。
誰も、リコのことを教えてくれない。そう思えば、かえって、気になって、知りたくて……どんどん、その気持ちが膨らんでいた。
「リコ?」
リュークは、ぎゅうっと、眉を寄せて、空を見上げた。そのまま、しばらく沈黙したあとで、「あぁ!」と、瑛を振り向いた。
「リコって、あれか。トキとか、シンとかの教育係」
「どんな人?」
「確か……龍族で、年上で……」
「美人? おっぱいは大っきい?」
「いや、俺様も詳しいことは知んねー。チマタのウワサで聞いただけだしなー。アイツらの教育係だったのも、十年以上、前の話だし。俺様も子供だったから、覚えてねーよ」
「そっか」
ほんの少しだけど、知れたのはよかった。瑛は礼を言ってから、もう一つ、質問をする。
リュークには、トキに飽きたら、乗り換えろと言われていた。自分が最強の龍王になってやると。
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