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──わけがわからん。と、ユウジが首を捻るのを見て、女性が再度「ふふ……」と笑った。
「本当に、あの人に似てるわね……」
「似てるって……あるじさまとかいう人に?」
「ええ」と、女性が楽しそうに頷く。
「雰囲気がそっくり。顔は……似てないわね。主様は男らしくて、凛々しい人だったから」
「失敬な……」
「あら。ごめんなさい。雰囲気が似てるものだから、つい……」
申し訳なさそうに頭を下げる女性を見ながら、ユウジは話の流れを代えようと、本題を女性に投げかけた。
「ええっと……。世間話というか、身の上話はちょっと置いといて。それで、こんな真夜中に、私になんの用です? まぁ、私のところに来る時点で、用は一つしかないでしょうけど」
「はい……」──そう短く返答して、女性が小さな四角い包みと封書をユウジに手渡した。
「こちらの封書に書かれている人物の筆跡を盗み、代筆をして頂きたいのです」
封書には、何も書かれてはいない。封を切り、中を見ると便箋が入っていた。
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