夢路の夜語り

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女性の声が震えている。泣いているのだろうか。 「あの……置いて逝かれたということは、貴女は、その……あの事件の時に、一緒に逝くつもりだったんですか?」 「……私と主様は、一心同体でしたから。当たり前のように、その道行きの共をさせて頂くつもりでした。ですが、主様は私とこの子を……主様が信頼していた者に、私達を頼むと預け、逝ってしまわれました」 女性の話を聞きながら、ユウジには、やはり唸ることしかできなかった。 (彼女が嘘を言っているようには見えない。なんとなく……自分の勘だけど、本当のことのような気がする。頼りない勘ではあるが) だが、疑問はある。 (彼女の言うことが本当だとして……。それは“あの”事件当時、彼の側に居たということだよな? それにしては、若いというか……若く見えるだけなのかもしれないけど、年齢の辻褄が合わないというか……) 「後を追うことも考えましたが、主様の最後の願いをむげにすることも憚られて……」 女性の話は続く。
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