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「あ、料理並べてない」
厨房に入ろうとした俺を榎田が引き止めた。
「タキシード汚したらまずいんじゃないですか? 僕がやりますから、店長はもうそこに座っててください」
とりわけ豪華に飾られたテーブル席には椅子が二脚。俺と園子さんの席だろう。店内にはパーティ開始を待つゲストたちが待っていた。俺が呼んだのは学生時代の友人を数名と店の常連客だ。園子さんの友人らしき女性たちが俺のことを見てざわついている。最近はあまりそういう反応をされていなかったから少し傷ついた。常連客からは祝福の言葉を投げかけられ、照れながら席へと向かった。
席につき、ぼんやりとしていると榎田が着々と料理をテーブルに並べてくれた。女性客は料理に近づき、笑顔を浮かべている。美味しそう、と声が聞こえ、ほっと胸を撫でおろした。
カランカラン、とドアベルが鳴り、会場中の視線が扉へと向く。ドレスアップした鏑木が仁王立ちしていた。
「皆様、まもなくパーティ開始となります。店長、ぼけっと座ってないでこっち来てください」
慌てて立ち上がり、鏑木の元へ向かう。扉の向こうに園子さんがいるのだろうか。緊張する。
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