55人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
合格発表
あなたが留学してから二ヶ月が経った。
今日は僕の大学合格発表の日。
センター試験でいい成績を残せたことで、大学受験も思いの外スムーズに問題を解くことができた。
あなたから言われたように、始める前に深く呼吸をする。
そうすれば、不思議と緊張が解れていた。
合格発表を確認するために、僕は大学へと来ていた。
さすがに、このときばかりは緊張も解けない――。
ドキドキする胸――。
朝からパラパラと季節外れの雪がちらついていて、寒さを和らげるためにマフラーを首にグルグルと巻き、手袋をはめ、厚手のコートを身に纏っていた。
もうすぐ合格者の番号が書かれた掲示板が運ばれてくる。
たった一人で見に来ている僕は、この緊張を誰にも言えないまま、ひたすら待っていた。
――ガラガラガラ――
大きなホワイトボードを二人の男の人が運んできて、受験生たちの前で止まる。
そこに、番号の書いた大きな紙が貼り付けられていた。
一斉に自分たちの番号を確かめに走り出す人たち。
僕は、そんなみんなから少し離れた場所で、自分の番号を探した。
――378…380…381――
「383……」
自分の声と、視線の先にある数字とが重なった。
あった――僕の番号があった――。
「やっ……た……」
言葉にならないほど嬉しくて、思いきりガッツポーズもできないほど、力の抜けた声が出る。
――玲兄……、僕……、受かったよ――
一番伝えたい人はここにいないけど、制服の胸ポケットに忍ばせているキーホルダーをギュッと握り、僕は心の中であなたに伝えた。
お母さんに電話しなきゃ――そう思って、スマホを取り出すと、回れ右をして通話ボタンを押そうとした。
最初のコメントを投稿しよう!