第6話 白身魚のオーロラソースがけと王城での舞踏会と

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「申し訳ないが、お話出来ることは何もない。婚約者が急病で、すぐに帰って屋敷の医者に診せる必要がある」  私をぎゅっと抱きしめながらリーデンハルク様が急を要する雰囲気で言う。ルカは内心、何か策を講じていそうな真剣な表情をしながら、私たちの斜め前に移動し、私は演技なんてものは出来ないので、どうしようもなく目を閉じた。 「おかしいですね、さきほどお元気にお話されていたように見えたのですが? 何か隠しておられるのでは?」  サーガリアン様がまくし立てながら近付いてくる気配がする。  けれど、すぐに「ん?」という声が聞こえ、薄目を開けて見てみると、彼は私たちの後ろ、そのどこか離れた場所を見ているように目を細めて、暫く動きを止めた。  そして、何もなかったかのように「お気を付けてお帰りを」と言って、そちらのほうに颯爽と去っていってしまった。後を始終黙ったままのレイノルド様が追う。  ガイアスさんの操縦する馬車が回ってくる前にルカに「何かしたのですか?」と尋ねたけれど、「いいえ、私ではありません」と彼は首を左右に振るだけだった。
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