第6話 白身魚のオーロラソースがけと王城での舞踏会と

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 でも、こう思ってしまうのはどうしてだろうか、私、もしかして……。 「ら、らら、卵黄を溶きほぐしましたね? で、では、ここに油を少し、い、入れまして」  明らかに動揺を隠せないままで、私はボウルの中の空いた場所に油を少し注ぎ入れた。 「どうした?」 「い、いえ、何も問題ありません。混ぜてください」 「あ、ああ」  言われた通りに卵黄と油を混ぜるリーデンハルク様。そんな彼に残りの油が入った小瓶を手渡して「あとは、こちらを半分の量になるまで少量ずつ加えて、慎重に分離しないように混ぜていってください!」と丸投げしてしまった。 「私は下処理をして塩、胡椒をしたお魚に小麦粉をまぶして、バターを溶かしたフライパンで両面焼いていきます!」 「あ、ああ」  なにをいちいち口で説明しているのだろうか、と思われたことだろう。けれど、そうしなければ、今の私は、私の心は落ち着かないのだ。  しかし、リーデンハルク様はリーデンハルク様で返事はしたけれど、卵黄と油の乳化に集中しているようでそれほど気にされている様子はない。  それから暫くお互いに料理に集中していて 「半分、とは、これでいいのか?」 「これは! リーデンハルク様!」  横から差し出されたボウルの中を見て、私は思わず声を上げてしまった。 「失敗か? 失敗したのか? 別のよく分からないものになったのか?」  一緒にボウルを覗き込みながら、リーデンハルク様がおどおどと問い掛けてくる。
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