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俺の名前は万次郎。
土佐出身の漁師見習いだ。
6歳で父をなくした俺は、寺子屋にも行かずに家業の手伝いをしていた。
そして、俺は14歳になった。
今日も仲間5人で船に乗り、サバやアジを獲りに海に出る。
5人の中では、俺が一番年下。
まだまだ漁については未熟な俺。
そんな俺の仕事は、船での雑用と飯炊きだ。
ある日のこと。
四国の南、足摺岬沖で漁をしていた俺たちの船は、強風に煽られてどんどん東へと流されていった。
船は、風の力と人が漕ぐ力とで進んでいくもの。
しかし、人間の力というのは非力なものだ。
暴風に対し、俺たちは抗うことができなかった。
帆もダメになり、舵も壊れ、俺たちの船は漂流していた。
広い海の真ん中で、俺たちにできることは、ただ、死を待つことのみであった。
夜が来て、朝が来て、また夜が来て、朝が来て……
何日もの間、俺たちは潮と風に身を委ねて、広い海をさまよっていた……
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