肉うどんの拘り

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 鍵を開けると、暗い部屋が出迎えてくれる。  一人暮らしなんだし仕方がない。  だが、恋人と別れた直後というのは、その暗さが増しているような気がする。  電気をつけても、部屋は薄暗い感じがした。  鍵とスマホを机の上に投げ出し、体はベッドに投げ出す。  フラれたわけじゃない。  自分から言った。  理由もきちんと言った。  理解はされなかった。  いつもの事だ。 「死ね、変態」  こう言ってくれたので、後腐れなんかは無さそうだ。  昔の恋人との思い出が一番美しい。  ドラマか何かで耳にしたフレーズだ。  そうなのかもしれない。  今も脳にこびりついている。    伊佐敷羽純(いさしきはずみ)。  彼女が今も俺の中に住んでいる。  その思い出のおかげで、俺は恋人と長続きしないのだ。  そんな思い出を残してくれた羽純は、こないだ結婚したらしい。  今回の別れには、その事も少なからず影響しているかもしれない。  話を聞いた時、俺の脳裏に浮かんだのは彼女の姿だ。  一番好きだった彼女の姿。    肉うどんを美味しそうに食べる羽純の姿だ。
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