プロローグ

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プロローグ

   0  その家は、普通の住宅地の中に建っていた。  外観は異人館を思わせる西洋風。尖った屋根からは煙突が覗き、蔦が壁を這っている。  いくつも並ぶ四角い出窓には刺繍の施された白いカーテンがかかっており、中を窺い知ることはできなかった。  家を取り囲むのは、茶色い煉瓦の高い塀。その門を抜けると、色とりどりの花が咲き乱れる庭が眼に入る。  甘く優しい花の香りに包まれながら先へ進むと、アンティーク調の玄関扉が待ち受けており、その脇に取り付けられた古めかしいベルの横には、可愛らしい丸文字でこう書かれていた。 『御用の方はベルをお鳴らしください』  そのベルをチリンチリンと2回鳴らすと、扉の向こうからパタパタと足音が聞こえてくる。  やがてカチャリと扉が開き姿を現したのは、青い瞳が美しい、どこまでも白い綺麗な女性で。 「いらっしゃいませ。あなたのなおしたいものは、なんですか?」  そう言って、彼女は優しく微笑んだ。 74f2e600-1eaf-4770-9516-d40f2fb36fb3 イラスト:麻mia様
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