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「姫、姫、お迎えに上がりました」
騎士は呼びかけて、さあ外へ出ましょうと手を差し伸べます。
けれど、
「去りなさい悪魔!」
そう言って姫は騎士の手を振り払いました。
「お前の言うことなど信じるものですか。
またわたくしを騙しに来たのでしょうが、そうはいきません」
姫は汚らわしいものを見るような目を騎士に向けます。
その目からはかつての輝きが失われ、暗くよどんでいました。
人を疑い、拒絶し、心を閉ざしてしまったせいかもしれません。
「どうなさったのです、姫よ。
私は本当にあなた様を助けに来たのです」
戸惑う騎士になおも姫は言いました。
「黙りなさい悪魔よ。
もうそのような甘言には乗りません」
騎士はどうにか姫に事情を聞こうとしました。
「何があったというのです、姫よ。
どうか私に教えてくださいませんか」
「あくまで知らぬ振りをするというのですね。
いいでしょう、わたくしの口からそんなに言わせたいのなら言って差し上げましょう」
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