時を振り返る

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 時が来た!   こうなるようにが来たんだって今ならわかる。  前にクラスメイトの誰かが江戸時代へ行ったらどうする? っていい出して、話が盛り上がったことがあった。  スマホで写真を撮ってあげると言うのが皆の第一声。それと音楽を聴かせてあげたら驚くんじゃない? とか、ライターを持っていたら、火打ち石で火をつける手助けができるよなって言った男子もいた。  その時は、今の自分が江戸時代へ行ったら絶対にヒーローになれると思い描いていた。これから起こる歴史的なことを教えてあげれば、たちまち預言者として崇められるんじゃないかって。  でも、それは浅はかな考えに過ぎない。特にスマホ、ライターの(たぐい)はバッテリーやガス切れになったらゴミ同然だ。  寂しくなっても誰かに電話することもできない。喉が渇いても自動販売機はないし、お腹が空いてもコンビニもない。  ロウソク一本が灯す光がどのくらい暗いのか想像できるだろうか。本なんて読めない。スイッチポンでご飯が炊けていたという世界が夢のよう。  そんな世界へ雪江は来た。
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