一日だけでいいから……

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一日だけでいいから……

 二人の少女が道端の草むらにしゃがみこんでいた。夏も終わり秋が近づいてきたため、冷たい風が少女たちの間を抜けた。少女たちは何かを一生懸命探しているようだった。 「うーん。今日も見つからないかな……」 「でも、もうそろそろ見つけないとあの子……」  二人の間に沈黙が流れる。しかし、二人の探す手は止まらない。日が沈もうとしていた。 「行ってきまーす」  私は玄関の扉を閉める。今日の一限は英語の小テストがあるので、勉強しようと早めに家を出た。家にいるより、集中できる。私はいつも遅刻ギリギリなので、これは珍しいことだった。  学校の前は桜並木がある。高校の入学式は風が強く、桜の花びらがたくさん舞っていたのを覚えてる。ただし、今は秋なのでひらひらと舞うのは紅く色づいた桜の葉であるが。  そんな中を通って教室まで行くと、案の定誰もいない。私のクラスでは時間ぎりぎりまで来ない人が多い。私は一番後ろの窓側の自分の席に座って教科書を広げた。  どれくらいしただろうか。顔を上げるとちらほら人が見えた。時計を見ると一時間目まで残り三十分。たぶん今いるのは遠いところから来ている人たちだろう。この時間じゃないと電車がなくて間に合わない人たち。ふと窓の下を見ると見覚えのある二人が歩いていた。気分転換にもなるしと、下の玄関に行くと二人は驚いたような顔をした。  私から見て右に立っている、黒髪を腰のあたりまで伸ばした少女が九条(くじょう)あす。左に立っているショートヘアで左にピンを二つ付けている少女が水戸(みと)せいか。  せいかが上履きを出しながら言う。 「かな、もう来てたの?私たちかなの家の前で待ってたのに」 「……待ち合わせしてたっけ」 「中学の頃からそうだったでしょ」  中学の時は確かにそんなこともあったような……。でも、高校でもそうだったっけ?  あすは小学校から、せいかは中学からの友達。私たちの通っていた中学は二つの小学校からの生徒が通っていた。最初はせいかを少し苦手なタイプ──キャピキャピしている子だったから──かと思っていたが話しかけてみると仲良くなれた。  先程から、あすは口を開かない。それほど驚いているのか。 「でも、かながもう学校に来てたとは驚いたよ。どっちかというと遅刻しかけてるから、今日もそうかなって話してたの。ね、あす」  やっぱりそうですよね。 「……あ、うん。二人とも、あのさ、一時間目あと十分で始まるよ」  あすが私たちの手を引っ張って走る。あすは一度も私と目を合わせなかった。 「私、あすに何かしたかな」  私はずっと読みたかった本をせいかに借りるついでに聞いた。あすが係で先生に呼ばれている今がチャンスだということもあった。 「うーん。してないと思うけど、確かに朝から少しおかしいと思うよ。でも、怒っているというより……」  続きが気になったが、あすが帰ってきて授業も始まったため、ここまでとなった。
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