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神楽山の麓にある神楽神社(かぐらじんじゃ)は、いつもたくさんの観光客で賑わっている。恋愛成就と交通安全の神が祀られている。この神社は2人の美人な巫女さんが居ると話題であり、ここを訪れる参拝客のほとんどは、彼女らを見ることが目的であった。神社巡り特集の雑誌に彼女らが載ると、その美しさから読者の心を奪って行った。今では彼女らに会いに来てる人がほとんどである。神社なのに神ではなく巫女を拝んで帰る参拝客にはバチがあたる。 この神社の近くに住んでいる一夜(かずや)は、中学生の時から神楽神社に毎日欠かさず訪れている。観光客の少ない朝方に参拝し、仕事の日は朝日を浴びながら学校へ向かい、休みの日は神社の周りを散歩する。今日もいつものように来拝殿の前に立ち、五円玉を投げ入れ、2拍1礼。そして毎回こう願う。 - 僕にも春が来ますように - 一夜が頭を上げると、後ろから女性に声をかけられた。「あら いらっしゃい」声の主は神楽の美人巫女の1人真奈(まな)であった。
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