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今のは…………声?
「ぁ………ぃ……ゎょ」
間違いない。声だ。それも女。
俺は耳を研ぎ澄ませ声に集中した。
「……ホントだってば……イマけったシ」
「マジ? はゃくデたがってるんジャネ?」
もう一人いる。こっちは男だ。
誰なんだ一体。天使と死神……まさかな。
「ハヤクぁぃたぃ……ウチらのぁかチャン」
……あか、ちゃん? 赤ん坊?
まさか……俺のこと?
俺……赤ちゃんになっちまったのか!?
そうなると、ここは子宮の中? ああ、そうか。腹の中の胎児だから何も見えないし自由に動けないのか。なるほどなるほど。状況把握。
……いやいやいやいや! 嘘だろ? つまりこれって、転生ってやつ? じゃあ俺、生まれ変われるのか? 心機一転、もう一度人生をやり直せるのか? やった! スーパーラッキーッ!
ん? でもまだ俺、意思があるぞ。記憶もしっかり残っている。ひょっとして前世の記憶を持ったまま生まれるのか?
だとしたらこれは相当なアドバンテージになる。幼少期の時点でちょっと知識をひけらかせば、天才児と持て囃されること間違いない。そしたらメディアに注目され、テレビやネットで取り上げられ、子供ながらに有名人になれそうだ。
だがしかし、結局中身は高卒のおっさん。成長すればただの凡人。両親に将来有望と期待されるのも重荷だな。やはりあまり悪目立ちせずちょっと賢い子供として暮らした方がいいかもしれん。
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