再生

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 こうして死後を経た俺の生前生活が始まった。 「ルミミン、ほらオミヤゲ。アカチャンをアヤスときのオモチャかってきたょ」 「ウチもアマンゾでカワイイベビーふくかっちゃった」  気が早いな。服とか玩具よりまずオムツやウェットティッシュとかの消耗品を用意しといた方がいいんじゃないか? 知らんけど。 「オイオイ、まだクうのかよ。ぶっちゃけクいすぎジャネ?」 「イイジャン。オナカへってんだしー」  確かに妊婦は胎児の分まで栄養を摂る必要があるからな。ただ食い過ぎはよくない。量より質。偏った食生活は逆効果だぞ。あと食ってばかりいないで適度の運動も必要だと思うぞ。知らんけど。 「チョ、タバコもぅゃめるってぃッたじゃん」 「キンエンはべっにぅまれてからでヨクネ?」  おい親父、たばこの煙りは胎児に悪影響だから今すぐやめろ。お袋もアルコールの摂取はくれぐれも控えてくれよ。呑んでんのか知らんけど。   「ハ? ナニなぃてんの?」 「……もうムリ。カラダはオモぃしトモダチともアソべなぃし……。マエのセイカツにモドリたぃ……」  情緒不安定。完全にマタニティブルーってやつだな。親父、ちゃんとフォローしてやれよ。妊婦のストレスは胎児の俺にも影響するんだぞ。知らんけど。 「……なぁ、キョウもしねぇの?」 「……ゴメン。キョウもそんなキブンじゃなぃ」  どうやら夜の営みの方もご無沙汰みたいだ。まあ母胎にも負担がかかるしお袋の喘ぎ声を聞かないですんで正直ホッとはしている。  ってな感じでたまに両親の会話が聞こえてきたのでその時だけは気は紛れた。しかし自我がある分、外部の情報を遮断され身動きがとれない生活は気が狂いそうだった。それでももう少しの辛抱だと自分に言い聞かせたり、産まれてからの華々しい人生を妄想したりしてなんとか耐え忍んだ。  だが、そんな健気な俺を絶望の底に突き落とす出来事が起こる。
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