静かな一日

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「はっ」  目を開けると、空の青さがまず沁みた。太陽の光がまぶしく、辺りはまだまだ明るい。  公園のベンチに腰かけた、までは覚えている。どうやらその後、あまりの気持ちよさに眠ってしまったらしい。座ったまま、天を仰ぐように頭を後ろに倒して。口もぽかんと開いていたのだろう、残念なことによだれの伝った感触が残っている。  夢を見ていた。とても不気味で、しかし忘れてはいけない、大事な夢。  隅っこの木の陰、植え込みとの隙間を覗き込むと、夢での光景と同じに土の盛り上がった部分がある。やはりこの下にまだある、いや『いる』。  今の時刻は午後三時半くらいで、寝ていたのは三十分前後といったところか。もし仮に『かくれんぼで遊んだ時間』とするなら、終わりまで少々長くかかったかもしれない。  誰かが探しに来てくれるのを待ってみても。  もし誰も来なければ、その時は……。  スマートフォンを取り出すのは、夢も(うつつ)も合わせると今日何度目だろう。今度は電話がちゃんと通じた。 「もしもし、警察の方ですか。実は、その、落ち着いて聞いていただきたいのですが……」  公園から小さな男の子の亡骸が見つかった、そんな事件が世間を騒がせて、一週間ほどが経った。当初はあらぬ疑いもかかり、色々と事情を聞かれもしたが、最終的には亡骸を発見した以外に関連はない、と理解してもらえて、今に至る。  現在その事件がどうなっているかはよく知らない。あまり深く関心を持つのも良くないように思えて、報道などはあえて見ないでいる。  あの子は、一体いつからあの場所に『いた』のか。  音も光もない、暗く寂しい場所。そんなところに閉じ込められれば、助けを求めたくなって当然だ。  早く見つけてもらいたかった、のかな。  今はただ、安らかに眠れるようにと願うばかりだ。
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