第一章

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 三人の女中たちが、おしゃべりをしながら、昼食の準備をしている。そのうちの一人は、昨夜、雪子を嵩也の部屋へ案内した女中だ。名をサトという。もう一人は痩せ体型だが美しい顔立ちをした二十代前半の女中、ふみ。もう一人は頬にそばかすがある十代後半の女中、ミツだった。 「奥様は、今朝も、ほとんとお食べになりませんでしたね」 「昼餉もお召し上がりにならないかもしれませんね……」 「このままだと、お体が弱ってしまう一方ですし、心配です……」 (奥様? もしかして、旦那様のお母様のことかしら)  雪子が、台所の入口で、女中たちの話に耳を傾けていると、気配を察したのか、サトが振り返った。雪子の姿を見つけ、目を丸くする。 「若奥様! どうして、このようなところに?」 「お仕事の邪魔をしてしまって、ごめんなさい。あの……奥様というのは?」  慌てている女中たちに尋ねる。すると、ふみが、 「旦那様……嵩也様のお母様の(しず)様です。お体が弱くていらっしゃるので、静かな離れで過ごしておられます」  と、教えてくれた。 「そうなのですね。先ほど、昼餉のお話をされていましたが、これから、静様のところへ運ばれるのですか?」 「え、ええ。はい」  頷いたふみに、雪子は思いきって、 「ならば、そのお役目、私にさせていただけないでしょうか」  と、お願いした。 「若奥様が?」  女中たちが驚いた顔をする。 「若奥様のお手を煩わせるわけには……」と慌てる女中たちに、雪子は、 「私はこの家に嫁いで参りました。旦那様のお母様である静様にご挨拶をしたいのです。お願いします」  と、頭を下げた。女中たちは顔を見合わせた後、 「それなら……」 「お願いします」 「すみません、ありがとうございます」  と、口々に答えた。
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