田舎という監獄

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田舎という監獄

 東京から電車で片道2、3時間。東は銚子、西は富士五湖、南は熱海、北は宇都宮、どの方角に行っても山や海に囲まれた自然豊かな田舎で余暇を楽しむことができる。  いわんや日本の他の大都市をや、そんな田舎は日本中どこにでもある。僕の故郷もバブル経済が終わるまで栄え、その後寂れ始めた、そんなありふれた田舎町。  旅館相手の酒屋に4人兄姉の末っ子として遅くに生まれた僕は10歳以上年の離れた兄や姉に甘やかされて育った。ひ弱で優しいけれど少しお調子者だった僕は歳を重ねるにつれ、腕白な子どもたちからにらまれ、仲間外れにされ、学校の中では微妙な立場になった。  そのころの小学校では、運動ができる、特に足が速ければヒーローになれるといったような空気があった。あまり運動ができる方ではなかったし、勉強もかろうじて宿題を忘れずに出してはいたが、テレビゲームばかりしていた僕に取り柄といえるようなものは習字くらいしかなかった。
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