side 桃井 花織

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side 桃井 花織

 泉先輩なんて、大嫌い。 「ハッピーバレンタイーン! 涼、これあげる~!」 「あたしも~! 本命だよ~!」  昼休み、廊下で見掛けた泉先輩は、沢山の女の子達に囲まれていた。 「マジで? ありがと~」  へらへらと掴み所の無い笑顔で、次々に渡されたチョコレートを受け取っていく先輩。  うわ……見なきゃよかった。  遠野先輩を探していたあたしは、その光景に気分を害して回れ右をした。右手に提げた紙バックを、身体で隠すように持ち直す。このチョコを渡すのは、放課後にしよう。  遠野先輩と泉先輩は、同じ学年の同じクラス。しかも幼馴染の親友同士。だから、遠野先輩に会いに行こうとすると、必ずと言っていい程、泉先輩に遭遇した。  正直、邪魔だと思ってた。顔が良くて、モテて。それを自分でもよく分かっててチャラチャラ遊んでる、最低のクズ野郎。真面目で一本気な遠野先輩とは大違い。  ……なのに、何で好きになっちゃったんだろう。
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