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アタシは今日、告白する。
ゴウ:「やっぱボウガンに変えるべきやろか...」
その相手は、今、アタシの隣で、ゲーム内の自キャラの装備の最適化について、今にもハゲ出さんばかりに悩んでいる、ゴウシだ。
ゴウ:「アンナは剣盾固定やんな?パーティプレイに特化した装備作った方がええ?」
アンナというのはアタシの名前だ。
自分でも可愛らしくて気に入っている。
ロクでもない親だけれど、この点にだけは心の中で感謝してる。
アン:「どっちでもええわそんなん。あんたは装備関係無く毎回ヒロの尻にくっ付いてばっかりやん。」
アタシとゴウシには、めっちゃ親しい共通の友人が2人居る。
今、アタシが名前を出したヒロことヒロムがその1人。
もう1人は、リノアという女の子で、今、ヒロムと一緒にお酒とつまみを買いに外に出ている。
アタシ達4人は大学のサークル仲間。
暇な時は、今日みたいな感じで、誰かの部屋に4人で集まって遊ぶ。
今回はオンラインでパーティープレイしようぜ、ってなって、ゴウシの部屋に集まった。
アタシの女の勘は、ヒロムとリノアはできている、って言ってる。
リノア可愛いんだよね~~~、アタシが羨ましく思うぐらい、女の子のモテ要素いっぱい持ってるんだよね。
細かい気配りとかサラッとできちゃうしさ...アタシなんかはガサツでさ...今も自分の周りにビールの空き缶散らかしちゃってたりするし。
ヒロムも気が利いて優しいんだよね。
ほんわか系男子なんだけどさ、さりげなく要点押さえた行動するんだよね。
今も飲み物が足りなくなったの気付いてさ、「俺、買ってくるわ」ってすぐ言ってすぐ行動してくれんの。
まあ、でも、実は...ヒロムとリノアは、アタシがメッセージ送るまで帰って来ないんだけどね。
今回、集まる前に、頼み込んだんだよね。
ゴウシと2人きりになれるよう、協力してほしいってね。
すげー簡単に「うん、いいよ。」って2人とも乗ってくれた時、「ああ、やっぱ、できてんなー。」って思ったよ。
あ、これ、人間ができてるって意味と、2人の間柄がデキてるってダブルミーニングね。
こういうのすぐ思い付くアタシ、頭イイっしょ?
へへへ、へへ...。
いや、今はそれどころじゃないっての。
いくらなんでも、2人を長時間待たせるのもアカンし、決心が鈍らないうちにアタシは勝負せな!!
アン:「あんな、ゴウシ...」
ゴウ:「アンナが『あんな』て、今更自己紹介要らんで。」
うわ...寒いわ...これどっちが悪いん?
どっちがどうってよりも、空気が冷えてもうたんがめっちゃ痛いわ...。
ここから告白に繋げるための空気ってどうやって作ったらええんや...。
アン:「ゴウシっておっぱい好きやんな?」
???
何を血迷うたんやアタシは...。
唐突に何を言い始めとるんやこの人...自分で自分がわからんわ。
まああれやきっと、おっぱいは自分の身体で唯一自信あるパーツやからな。
告白に繋げるためにそっから入ろうと、無意識で口に出してしもたんや、うん。
アホやろアタシ。
ゴウ:「それがな、そうでもないねん。」
アン:「は!?世の中の男で、おっぱい好きじゃない奴なんて居るん?」
はい失敗。
ってこれ、想定外もいいとこやん。
ビックリやわ、ほんまどないしょ...。
ゴウ:「意外と居ると思うで。」
アン:「いや会った事も聞いた事も無いわ...。」
謎の意外性を発揮する男、ゴウシ。
掴めねぇわ、マジ掴めねぇ...。
でも、そんな所が好きなんよね...。
うちの親、厳しかったんよね。
自分達の敷いたレールにアタシを乗せたいってのがビシビシ伝わって来た。
あれはアカンこれはアカン、アカンアカンアカン...両親の価値観に締め付けられて、アタシはずっと息苦しかった。
ゴウシは、そんなアタシから見て対極の存在だった。
謎の感性で、いつもフワフワしてた。
なんやろこいつ、何にも縛られてないんかいな...って、不思議な生き物見付けたっていうのが第一印象。
急に小説書きたいとか言い始めて、タイトルにめっちゃ悩みまくって、その悩みが1日で終わらず、次の週に集まった時に...
ゴウ:「なあ、俺の小説のタイトル、『ぺぺぱぱらんぱぱらぴろりんぬ3』ってどうや?」
って言い出した時、こいつの頭はもう異次元に領域展開しとるわって思った。
普通じゃなさ過ぎてビビったけれど、それがアタシにとっては最高やった。
このクソつまんない世界から、アタシを異次元に連れ去ってほしい。
いや、回想に耽っとる場合ちゃうやん。
この想い、どうにかして上手く伝えなアタシほんまに頭おかしなってまう!
アン:「まあ、おっぱいの事はどうでもええねんけど...」
ゴウ:「ほーん。どうでもええ質問を改めていたされたアンナ氏のその真意は何でござりましょうか?」
アン:「...うち...な...」
ゴウ:「なんで急に小声?」
アン:「うちは、あんたの事が好きなんよ!!」
小声から急に大声に繋げたった!!
全く効果のわからん意味不明コンボや!!
せやで、単なる勢いやで。
ゴウ:「あー...マジかー...。」
なんやそのテンション。
これアカンやつやん。
このリアクション、フラれる時の確定演出やん。
アン:「うちを、あんたの彼女にしてほしいんよ。」
ほんでもな、ここまできっちり追撃は決めなアカン。
告白っちゅうもんは、単に「好き」言うて終わりじゃないんよ。
「どうしてほしいか」を伝えて、相手に答えさすとこまで進めてナンボや。
ゴウ:「アンナ、ありがとうな。よう言うてくれたわ。」
アン:「なんやその感謝モードは。フラれる覚悟はできてるで。いや、フラれたないけど。今覚悟できた気がしたんや。とりあえず。」
口では...そうは言ったけど、正直ちょっと泣きそうや。
もうこれアカン流れやんな。
ゴウ:「それ言うてまうと、4人の関係崩れかねんもんな。よう勇気出して言うたと思うで。」
アン:「そんなん考えもせんかったわ。ヒロムとリノアは付き合うとるんと違うん?」
ゴウ:「....」
急にゴウシが下を向いて、深刻そうな顔で考え始めた。
いつものフワフワ感が表情から消えている。
あ、アタシ、ヤバい事言うてしもたんかな...。
ゴウ:「俺も、アンナの勇気に応えなアカンな。」
何か意を決したように、ゴウシは言う。
何をどう応えてくれるかはわからんけど、っていうかこの人色々わからな過ぎてどうしようもない。
とりあえずフラれる予感しかしない。
ゴウ:「俺もアンナに告白するわ。」
アン:「う、うん...。」
なんや改まって。
「しゃーない彼女にしたるわ」でええんやで、そんな気ぃ張って告白モードにならんでも。
ゴウ:「俺...ホモやねん。」
アン:!?!?!!??
は?
告白って、それなん?
アン:「あ~...ゴウさあ...うちが傷付かんよう、そう言うてくれとるんやろ。あんた頭ええなあ。」
ゴウ:「ちゃうねん、ほんまやねん。」
あ...マジなんすか...そっすか...。
いやでも、にわかには信じられへんわ。
そんな気配、全く感じられんかった。
ゴウ:「ずっと、言うべきかどうか迷ってたんよ。」
アン:「それってヒロムにもリノアにも言うてへんの?」
ゴウ:「うん、2人とも知らんと思う。俺、今まで怖くてよう言わんかってん。」
アン:「アタシに言うたって事は、2人にも後で言うんやろ?」
ゴウ:「そうするって決意したわ。ついでに、もう1つ告白するって決めた。」
まだ何かあんの?
いやもう、いいです...フラれた事実は確定してますし...自分、涙いいっすか?
ゴウ:「俺、好きな人おるんよ。」
アン:「そうか...。」
ゴウ:「アンナに勇気もらったわ。」
アン:「お役に立てて...光栄ですが...アタシの心は粉々やで...。」
ゴウ:「そら申し訳ない。」
謝られてもなあ...。
ここで一区切り付いたと判断したアタシは、ヒロムとリノアにメッセージを送った。
2人が来るとアタシは、入れ替わるように部屋を出て、外のコンビニのトイレで泣いた。
次の日...。
ゴウシは、アタシが見守る中、ヒロムに告白した。
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