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答える声も暗く感じて、思わず俺ではなくミローナさんが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「どうしたの、クーフくん? まだ痛かった?」
そう言ってさらに顔を近づけるミローナさんの上目遣いが色っぽくて、思わず俺が悶絶している。くそ、俺もその距離で言われたい!
「大丈夫です。もう痛みも引きました……。お気遣いありがとうございます」
クーフは丁寧に礼を言うと、一つため息を挟んで立ち上がり、帽子の位置を直していた。
「じゃ、先に進むとするか」
男の様子は気になったが、もう動けそうな様子を確認して声をかける。すると相手もすぐに頷いて暗がりの中に足を進めていた。歩き出す男のすぐ隣に立って、俺は道の先にライトを飛ばす。
「クーフ、魔物の隙を作ってくれるのはありがたいけどよ、ヤバイ時は引けよ。ここの魔物なら俺は相性いいからさ。無理する必要ないぜ」
心配してそう声をかければ、男はうん、と短い返事だ。
「どうした、腕、まだ痛むのか?」
クーフの様子に思わずそう問いかければ、男は首を振る。
「……違う。治癒魔法、得意じゃないんだ。人の音が体に入るから」
意味のわからない回答ではあったが、なんとなくコイツ特有の感覚なんだろうと思った。クーフの術故に聞こえる音ってのは、治癒魔法であっても聞こえるものなのか。
そんなことを思っていると、男は一つため息を付きすぐに顔を上げ、暗がりめがけて歩みを早めていた。
「……駄目だな……。まだ探してる自分がいる……」
すれ違い際に妙な独り言を聞いて、俺は思わず首を傾げていた。何を探しているのか気にはなったが、なんだかコイツの表情から察するに、触れるには重い話題な気がして、俺は疑問を飲み込んでいた。
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