真実の愛、その末路

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 王城の夜会会場で、人々の視線と話題を集めているのはこの国の王太子殿下だった。細身で背が高く金髪碧眼の美青年は、この国マーレの貴族令嬢にとって憧れの的だ。マーレ国王唯一の嫡子、カーライル王太子殿下の視線が熱心に注がれているのは、『今は』一体誰なのか。 「ごらんになって、美しい銀髪がまるで白薔薇の精のよう」 「男爵家の御令嬢と聞いてますわ。随分と贅を凝らしたドレスをお召しになって……」 「殿下が贈られたのではなくて? ずいぶんと御執心ですこと」  羨望と嫉妬が入り混じる女性たちの噂話はやがて、壁際でひとり立つアンジェリカにわざとらしく向けられるのだ。侮蔑と嘲笑を滲ませて。 「……お気の毒なのは、アンジェリカ様よ」 「仕方ないのではなくて? 殿下の御心の移ろいを、咎めることなんてできませんもの」  気の毒だと言いながら、会話の途中で小さな笑い声が混じって聞こえる。アンジェリカ・ローレンはただ静かに微笑みを浮かべ、誰とも目を合わさぬようにして背筋を伸ばした。  嘲りの理由は、つい二か月ほど前までカーライルの隣に立っていたのは何を隠そうアンジェリカだからだ。それと、もうひとつ。
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