その条件はなんですか?

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 罰ゲームで学年一の美少女に告白するという、漫画やアニメにおいてはありがちなイベントをまさか現実世界において、自分がその当事者になるとは思わなかった。  昨日いつもの仲良し男4人が集まりいつも通りゲームをしたわけだが、何故か最近スリルが足りていないという話になり、総合的に一番負けた人が明日学年一の美少女『羽崎莉衣菜(はざきりいな)』に告白しようということになった。  俺の得意なゲームだったし、負けるわけがないと思っていたが全員謎の底力を見せ始め、まさかの敗北。  羽崎莉衣菜は新入生代表の挨拶をし、最初のテストでも文句なしの学年一を達成した。スポーツも万能で様々な部活動から勧誘を受けているが、劇団に所属しており将来は女優を目指しているとかいないとかで部活動はしていない。容姿も芸能人と言われても納得してしまう程に整っている。  まったく俺とは別次元に生きる彼女だが、当然の如く学校の男子は放っておくわけもなく入学直後から交際の申込みが後を絶たなかった。  しかし噂によると新たに交際をスタートさせても、どれも3日間で別れてしまうとか。その後またすぐに付き合うようだが、やはりまた3日間で別れるというのを繰り返しているらしい。  そんな人気の彼女が、万に一つも俺の告白に頷いてくれるわけはない。  一度も話したことのない羽崎さんに告白するというのはまずその行為の時点で難易度が高いわけだが、靴箱に放課後来てくださいの手紙を入れるという古典的なやり方で決行することにした。  人気のない静かな場所、そしてフラれる瞬間を見届けたいということで友人達が隠れるスペースがある場所。現在はただの備品置き場になっている離れの教室に呼び寄せることにした。  もし来なければ告白をしなくて良いということになったが、待つこと数分で彼女はやってきた。これで告白しなければいけなくなったわけだ。  それにしても可愛い。透明感があってまさに清純派正統美少女。ボブの黒髪ショートに白い肌のコントラストが絶妙である。 「えーと、川俣くん……? 初めまして……ですよね?」  少し警戒の色が見える。そりゃそうだよな。 「話すのはそうですね。1年D組の川俣成吾(かわまたせいご)って言います」  まずは自己紹介。ラブレターにも名前はちゃんと書いたけどね。どうせフラれるわけだし一気に終わらせよう。 「突然呼び出してしまいすいません。一目惚れしました。もしよければ付き合ってください!」  真っ直ぐに相手の目を見て言い切った。どうだそこで見学してる者たちよ。俺はやりきったぞ。 「あ、そうなんですね……」  リアクションは薄めだ。告白され慣れてるわけだからそうなるだろう。 「今は誰ともお付き合いしてないのでいいですよ」 「……え、いい……の……?」 「はい! よろしくお願いします」  何が起こった、これは夢か幻か。もしかして羽崎さんもグルでここまでが罰ゲームとか? 俺の反応を見てあいつら笑ってやがるのか? 「えーと、少し条件がありまして、まずは3日間の仮交際期間にしてください」 「どういうこと……?」 「3日間で私の条件をクリアしたら正式にお付き合いしてください」 「……条件というのは?」 「それは内緒です。条件を達成したらその時点で教えます」  そんな無茶苦茶な。でも待てよ…… 「もしかして今まで告白されるたびに仮交際期間を設けていたの?」 「はい」  なるほど、3日間で別れてたのは男を取っ替え引っ替えしてたわけじゃなくて条件を達成できなかったからか。 「あと、大事なことですが、仮期間中はキス、ハグなどの行為は禁止です。もちろんそれ以上もですが。手をつなぐ、頭を撫でるはオーケーです。何か質問ありますか?」  頭が展開についていけてない気がするが、とりあえず何も浮かばないから良しとする。 「多分、大丈夫……」 「ありがとうございます! では堅苦しい話はこれくらいにして、まずは連絡先交換しましょうか!」  携帯電話を取り出したので俺もポケットから取り出した。 「あと、今日はこのあと用事があるからこれ渡しておくね」  そう言い彼女はカバンから鍵を取り出した。 「これは……?」 「私の家の鍵だよ。いま一人暮らし中だからいつ来てても大丈夫だから。今日は多分夜9時過ぎくらいには帰れるかなぁ」  仮期間中なのに……合鍵だと。 「あ、時間がやばい……! あとで住所送るね!」  元気にそう言うと、彼女は軽く手を降ってから教室を立ち去った。  と、彼女が出ていくと同時に物陰から友人達がゆっくりと出てきた。 「おいおいおい。なんで成功してるのよ!」 「いや、なんかわからんけど……まあでも仮期間だし」 「ってかあの感じだとお前じゃなくてもきっと告白にオーケーしてたよな」 「まあ……そうだろうね。いま付き合ってる人いないから良いって言われたし」 「マジかー罰ゲームやればよかったわぁ」  友人達の嘆きが聞こえる。  嬉しいけど3日間という短い期間の中で条件をクリアしないといけないのはなかなか至難だ。
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