チルチルの矜持、ミチルの憂鬱

13/52
127人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
 骨格は大人のそれとして、その目が特徴的だった。  二重瞼の幅が広くて、少し眠そうに見えるその目。  そしてその目に吸い込まれるかのように、なぜか小学校時代の光景がフラッシュバックする。 「では質問を変えまして、原田さんがトレーナーを目指したきっかけというのは何だったんでしょうか?」 「きっかけは、そうですね。僕の小学校時代の話なんですけど。担任の先生がお母さんみたいな優しい感じの先生で、僕その先生のことが大好きで、肩揉んであげたんですよね」 「その頃からもうすでに才能を発揮されていたんですね!」 「いや、それがですね。その頃の僕、肩もみがものすごく下手くそだったんです」  女性リポーターが大げさなくらい、えぇっ! と目を丸くした。 「それで、僕の後に先生の肩を揉んだ子がいたんですけど、その子がものすごくマッサージが上手くて」  開かずの金庫のダイヤルがかちりと音を立てた。  俺は思わず「原田ッ!」と叫んだ。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!