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自分がメインで関わったサイトにはわがまま言って、東上芽衣の名前からアルファベットの「TJM」をこっそりと忍ばせていたのが功を奏して、私のデザインが少し話題になってきていると他のクライアントから聞いていた。
「それにしても、幻のTJMが、まだお若い女性のクリエイターさんだったなんてね。失礼ですが、年齢とか聞いてもいいですか?」
幻?
まさか押田さんからそんなことを言っていただけるとは思ってもいなかった。
いちいち溢れてしまいそうな感情を抑え、ビジネスモードで返答する。
「27歳になったところです」
押田さんのことは、彼がまだこんなに有名になる前からずっとSNSをフォローしているから、公開されたことがある情報は大抵知っている。
押田さんは私より5歳上の32歳のはずだ。
ちなみに誕生日や身長、足のサイズ、交友関係も、既婚だということも知っている。
「そっか、若いねー。びっくりだよ。
一番始めにTJMがいいって言いだしたのは、大也なんだよね。知ってる?BIIの曽根大也」
不意を突いたこの言葉で、私の心臓が突然、バクバクと音を立て始める。
そのお名前がまさか一番初めのこの顔合わせで出てくるなんて思ってなかった。
そして、まさか彼が私の作品を知っていてくれたなんて。
「大丈夫?」
ほんの少し固まってしまった私の顔を押田さんは首を傾げて覗き込む。
「あ、ごめんなさい。も、もちろん知っています。BIIさんの曲は本当によく聞いています」
頬が熱い。
ちゃんと冷静でいられているかな。
本当は飛び跳ねて喜びたいくらい嬉しい。
だけど、今は仕事中で、今私の隣にはうちの社長も座っている。
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