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6. 告白しないと決めた日
お迎えに間に合わないと母から連絡が入ったので、翌日も私が保育園に陸を迎えに行くと、顔馴染みの保育園の先生に「あら、陸君、早退しましたよ」と言われる。
「そうなんですか?」
「聞いてませんか?」
先生は言おうかどうしようか迷っているようだ。
「陸君のお父さん、仕事中に事故に遭って救急車で……」
一瞬、頭が真っ白になる。
「連絡を受けたおばあさんがお迎えにきました」
「おばあさん? でもまだ病院では……?」
岳のお母さんはまだ入院中だ。
「亡くなった奥様の方のおばあさんです」
「あっ、そうですか。わかりました」
涼子のお母さんが事故を知って、陸を迎えに来てくれたのだ。
岳の怪我の具合が心配だったが、どこの病院にいるのかもわからず私は悶々とした夜を過ごした。
どうしても、涼子が歌っていたという和歌を思い出してしまう。
永遠の愛を誓った岳の心変わりに、罰を当てたの……?
その夜、涼子の夢を見た。ただ遠くから私をじっと見つめている。涼子に近づいて話をしたいのに近づけない、もどかしい夢だった。
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