1. 幼馴染

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1. 幼馴染

「で、(ゆず)(がく)とどうなの?」  高校の陸上部同期のOB会で、長嶋(ながしま)に聞かれる。  飯塚(いいづか)(がく)は、私、日村柚子(ひむらゆずこ)の幼馴染だ。岳はサッカー部だったが、長嶋がサッカー部をかけもちしてた関係で今でもたまに会うらしい。 「どうって、変わらず隣に住んでる幼馴染だよ」  私は感情を入れずに答える。酔うと長嶋はしきりに私と岳をくっつけようとするから厄介だ。 「子供の世話、引き受けてるんだろ?」  岳には五歳になる(りく)という男の子がいる。最愛の妻が亡くなり、父子家庭になって我が家の隣の実家に戻ってきた。 「引き受けてるのはうちの母親。ほら、岳のお母さんとママ友だからさ。おばさんが骨折して入院してて、その間だけ保育園のあと岳が仕事から帰るまで預かってるのよ」  保育園に私が迎えに行くこともあるけれど、長嶋にそれを言うとさらに面倒なことになるので黙っていた。 「あいつの気持ち、わかってやれよ。お前は未婚、あいつは子持ち。自分からは告白できないって思ってるんだ」  脳天気な長嶋め。そんな簡単な話じゃないのに。  三年前に亡くなった岳の最愛の妻で陸の母親でもある涼子(りょうこ)は、私の唯一無二の親友なのだから……。
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