騙し屋の道程

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 私は真下茜。異性をその気にさせ決定的な浮気現場を写真に収めて依頼主に渡す騙し屋を生業としている。騙した男性は数えきれない。  今日もまた私に依頼がきた。依頼主は川村晴香。彼氏の伊藤慎二がもう浮気をしないと誓ったけど、本気かどうか確かめて欲しいと言われた。彼氏が自分に一途なのかどうかと素行調査を依頼された。特に素行調査は念入りに行うようにと言われた。  彼女を信用させることができない男性と彼氏を信用したいけど疑ってしまう女性が後を絶たない。私にとっては男女の機微が金になってこんなに簡単に儲かる話はないとほくそ笑んだ。  私は華麗な容姿と騙しのテクニックで相手の本音を引き出すことに長けていた。川村から渡された資料と川村の知人から情報を収集した。  伊藤慎二は二十七才の会社員。彼女の川村晴香とは大学生時代から付き合って七年になる。伊藤は長身で小顔、鋭い眼光が特徴のモテる男。仲間に優しく仕事ができて頼り甲斐がある印象だ。  川村の証言では伊藤は少なくとも一度浮気をしたことがあるらしい。これだけのイケメンなら寄ってくる女性も多いことだろう。川村がはっきり浮気だと断定できているのが一件だけで他にも浮気をしている可能性はあるようだ。  伊藤の容姿や態度から明らかに浮気に関して黒だと思った。しかし伊藤のことを調べていると、身の危険を感じることがあった。私の住所宛に差出人はなく内容は調べるなとしか書かれてない封書が届いた。  伊藤を誘惑して真相を確かめる前にまだ調べることがあった。伊藤は綺麗で品のある店が好きだとわかった。飲食店、服飾店、商談をする場所も高級感がある店を好んでいた。そんな伊藤が一週間に一度、この街の辺境の寂れた家屋を訪ねることがあった。  そこに何があるのかまではわからなかった。わかっていることは伊藤がそこに行く時は普段とは別人のように周りを警戒しているということだった。家屋が近づくと全身から針を出しているような警戒心があった。
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