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いざ、木馬に跨がったら…… ☆
『少しだけ種明かしをすると、依頼主はあなたがこの木馬に跨がる事をお望みです。なので、この課題をクリアしなければ本当に現実には戻れません』
今までになくまじめな雰囲気で文字が出て、私は溜め息をつく。
「私を嫌っている令嬢か誰かかしら」
世間では悪役令嬢だの、美しい薔薇にはトゲがあるだの、陰で好きなように言われているので、もはや誰に恨まれていてもおかしくない。
『恨みではありません。そこだけはお答えします』
「……恨みじゃない?」
ポカンとするものの、どうであれ私がここから出られない、出るには処女を失わないといけないのは確かだ。
「……魔術師に依頼したら、処女膜の再生ってしてもらえたかしら」
さすがに、貴族の娘がこれから嫁ぐのに生娘ではないというのは問題がある。
『医療も囓っている魔術師なら、可能だと思いますよ』
この文字も、初めから見ると随分砕けた口調になっている。
『あとからやり直し可能ですから、さあ、やってみよう!』
軽い文字の口調に、私はギリィ……と歯ぎしりをする。
「……ここから出て、あとで正体が分かったら、その減らず口が叩けなくなるまで、ぶちのめしてやるわ」
悔し紛れの言葉を口にし、決意してから私は立ち上がった。
『やりますか?』
「やるわよ!」
『それでは、お手伝いします!』
「え? きゃあああああああっ!!」
手伝いという文字を見て何事かと思った瞬間、私は全裸になっていた。
全裸!
もう綺麗さっぱり全裸だ。
ストッキングを残すとか、靴を残す、アクセサリーを残すという慈悲すらくれない。
「悪魔!!」
『はいはい、次はそこの媚薬を使ってくださいね』
私の文句をサラリと流し、文字は矢印を浮かべて点滅までさせて、先ほどのピンク色の液体が入った瓶を示す。
っはぁあああぁ…………。
海より深い溜め息をつき、私は瓶の前でしゃがむ。
「どうすればいいの?」
『座って、足を開いてオイルを指に付け、秘部に塗りつけてください』
文字はあくまで文字だが、この状況を誰かに見られているのだと思うと、恥ずかしくて堪らない。
でも、やるしかないのだわ。
私は心の底から嫌そうな顔をし、座って足を広げると瓶の蓋を取った。
愛の妖精がついた蓋を床に置き、瓶を傾けて掌にピンクの液体を取る。
トロリとしたそれは粘度があり、私の掌に溜まる。
「うぅ……」
私は脚を開いて、なるべく見ないようにして液体のついた指先で秘部に触れた。
「ん……っ」
手に取った液体は少し冷たかったのに、秘部に塗った途端温かくなった。
しかもジワジワと体の奥に浸透してくる気がし、気持ちが落ち着かない。
『その調子でどんどんいきましょう! 胸にも、全身にもつけてくださいね!』
文字通り、文字が躍っている。
何がそんなに嬉しいのかしら。
私はすっかり諦めの境地に陥り、仰向けになると瓶の中身を次々に全身に塗っていった。
お腹に零してぬりたくり、胸や太腿にも伸ばしていく。
「あぁ……っ、あ……」
紅茶で体の奥に蓄積していた熱が、今度は外部からの媚薬によってどんどん呼び覚まされてくる。
「ん……っ、んぅ……っ、うーっ」
下腹部を襲う疼きはどんどん高まり、私は仰向けになったまま腰を浮かせ、くねらせる。
乳首もピンと尖り、全身が性感帯になったかのようだ。
――と、今度は天にあの文字が浮かび上がった。
『準備完了ですね! では木馬にいってみましょう!』
私は思わず口元でチッと舌打ちをしてしまう。
『舌打ち、はしたない!』
たしなめる文字を無視し、私はノロノロと起き上がる。
「これ、滑って転ばない?」
『滑らない床になっておりますので、ご安心ください。もし転倒しても、その瞬間柔らかくなりますから、お怪我はしません』
「何もかも不親切なのに、変なところだけ親切なのね」
思わず突っ込むと、木馬に向かっている矢印がクネクネと動いた。
気持ち悪い。
「この木馬、乗る所が高くて足が届かないわ」
言った途端、足元に階段ができた。
ほんっとうに変なところだけ親切だ。
濡れた足で恐る恐る階段を上っても、滑る事はなかった。
私は目の前にある、木馬の突起――男性器を模した張型を睨む。
体の疼きはますます酷くなり、下腹部にあれを含めば、慣れた女性なら気持ちいいと思うのだろう。
「……私、処女なのよ」
弱々しい声が漏れる。
『分かっていますよ。いま体に塗った薬は、痛みを散らす作用も含まれています。恐れずにいきましょう!』
優しいのか悪魔なのか分からない。
「はぁ……」
私はこれ以上ない重たい溜め息をつき、木馬の頭についている取っ手を握った。
鞍を跨がると、向こう側にも足場ができあがって、私がゆっくり腰を下ろせるよう補助してくれる。
ふぅ……、ふぅ……と呼吸を整えながら、私は少しずつ腰を下ろしていった。
「お父様、お母様、ごめんなさい……。親不孝な娘を許してください……」
『別に死ぬ訳じゃないんですから』
前方に文字が見え、私はクワッと目を見開く。
『怒らないでくださいよ! 初めてでも痛くないし、後ろも柔らかくなっています。さあ、ズブッといってみよう!』
「……覚えてなさいよ……」
私は悪魔をも睨み殺す勢いで文字を凝視しながら、蜜口に張型の先端を当てた。
「あぁ……、あ……」
片手で張型の竿の部分を支え、私は目を閉じる。
入れる場所を確認したあと、今度は後ろの少し細い張型にも手を添え、後孔に当たるよう調整する。
おかしな事に、木馬についている張型だというのに、魔法のせいなのか妙な弾力と温かさがあった。
しかも指で確認すると血管まで浮き出ていて、生きているかのように時折ビクンと跳ねる。
「大人しくしていなさいよ」
口元で悪態をつきながら、私は二本とも入れる角度を定めたあと、一気に腰を下ろした。
「っあぁあああぁ……っ!」
「気持ちいいっ! エトラ!」
いきなり男性の声が聞こえ、私はギョッとして目を開けた。
「えっ!?」
視界に飛び込んだのは、四柱式の天蓋付きベッドの中だ。
加えて私の下には人がいる。
人――。
「王太子殿下ああぁあああっ!?」
悲鳴を上げ、とっさに立ち上がろうとしたが、腰を掴まれて下からズンッと突き上げられた。
「あぁああんっ」
「待って、エトラ!」
私に縋るような目を向け、クーゼル様はさらにズンズンと続けざまに私を突き上げた。
「いやっ、やめてくださ……っ、あぁああっ」
初めてのはずなのに、あの白い空間でたっぷり媚薬を体に纏ったせいか、まったく痛くない。
それどころかひと突きごとにこの世のものと思えない悦楽が私を襲い、頭の中が真っ白になる。
知らないうちに私は涎を垂らし、蜜壷をきつく引き絞って絶頂していた。
「あぁあああ……っ、あーっ!」
「あ……っ、きつい……っ、素敵だ……っ、エトラ!」
クーゼル様は私を抱き締め、問答無用で唇を奪ってきた。
唇を舐められ、吸われ、嫌なはずなのに、彼からされるキスで私は気持ちよさを得ていた。
怯えて奥に逃げようとする舌を舐められたかと思うと、尻たぶをギュッと掴まれる。
「んぅっ!」
その時になって私は自分の後孔に異物が入っているのに気付いた。
慌ててお尻に手をやると、何か硬い物が入り口から飛び出ていて、中身は直腸の中でウネウネと動いている。
「やめてぇええ……っ、お尻、やめてぇええっ、やだあぁああっ」
「君のお尻には、特製の張型が入っているから、十分楽しんで。エトラとの初めては最高のものにすると決めていたんだ」
「ま……っ、まさか……っ、すべてクーゼル様が仕組んだのですか!?」
私の問いに、顔だけは誰よりも美しい王太子は、青い瞳を細めてそれは嬉しそうに笑った。
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