今宵は満月

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今宵は満月

もう全部が嫌になって無我夢中走る。 自分がどんな姿でも惨めな顔でも… もうどうでも良かった ただ… 気がつけば、満月に照らされて輝く桜の木の下に来ていた。 「わぁ…綺麗。私とは大違い」 そう口にして桜と満月を見ていると、ふと誰かがいることに気づく。 その人物を見た瞬間に、全てが止まった気がする。 『満月の日には空から天女が降りてくるかと思ったら』 男の人がこちらを見て目が合う。 「あ…」 『ボロボロじゃねぇか』 「あ…あの」 男の人は桜を見上げて懐から慣れた手付きで煙管を取り出して吸う。 どうしてこんなに絵になるのだろうか 会って時間が経ってないのに、もうこの人に惹かれていくのが分かる。 「お…な」 『で、なんでボロボロなんだ?』 男の人の言葉で、やっと自分の服装に気づく。 そしておもわず座り込む。 「あの…これは…」 『言いたくないならいい』 そう言って、また吸う。 「あの…どうしてここに?」 気づけば、質問していた。 男の人は、満月を見つめていた。 それすら、格好良くて見惚れてしまう。
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