カウントダウン

　
　あれは、何年前の記憶だろう？
　この、カップリングスマートウォッチ、通称CSを装着される年齢になる前の話だ。
　幼馴染の咲良に告白され、俺も大好きだ、必ずお嫁さんにするって約束した。
　若気の至り･･･いや、幼気の至りか。
　今じゃ絶対に言えない。
　言ったら、始まっちまうんだから。
　だからずっと封印してきた。
　二度と言わないって。
　咲良は･･･今も同じ気持ちなのかな。

　学級委員の芳野咲良は、教壇に立って修学旅行の班分けの話をしている。
　高校三年生の篠田涼平のクラスメイト、そして幼馴染。
　子供の頃から思っていたけど、咲良は細くてちっちゃくて、髪が長くて目が大きくて、とにかく可愛い。
　それでいて、涼平にはいつも上から目線でお姉ちゃんみたいな口を利く。
　「涼平、聞いてるの！」
　ほら、ちょっとボーっとしてただけなのに。
　こっちを睨むように腰に手を当てて立つその腕には、スマートウォッチが装着されている。
　中学に上がると同時に、全国民に強制的に装着され外すことが許されない、画期的な国家救済策とも希代の悪法ともいわれる「カップリング法」の為の装置。
　カップリング法制定の目的は、少子化対策らしい。