秘密の関係

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 飲み会が終わった後は、別々の帰路につくふりをする。みんなが見てるから。そのあとまた同じ道をたどってさっきのお店の前で合流する、というのが私たちカップルのルール。どうやら、かずくんは周りに付き合っていることを知られたくないらしい。喧嘩したときとかに周りに気を使わせたくないでしょって、そんなことまで考えられる優しいところがとても好き。 「おまたせ!」 少し駆け足で来たから、白い息が上がる。 「そんな走ってきてくれたの?うれしい」 だって早く会いたくて、なんていうやり取りがあるくらいには熱々幸せ絶好調。会うのは大体かずくんのお家。そろそろ私専用の歯ブラシとか置きたいと思うけどそれは許してくれない。パジャマだってかわいいのを買ってあるのに置いてっちゃダメなんだって。もしかしたらちょっと潔癖なのかもって最近は受け入れてる。でも私もちょっとずるがしこいから、ただでは折れてやらない。私の使ってる化粧水をプレゼントって渡して、お泊りの時は借りるねって言うことにしてるの。そしたら私はスキンケアに困ることはないし、かずくんだって美容に気遣うきっかけになるしいいかなって。いつもと変わらない環境を相手に知られないようにゆっくり作っていくこの感じが意外と好きだ。けど最近はやけに色づいた、というか全体的に雰囲気が変わったような、なんとなく違和感を感じていた。  夜も23時、二人で紅茶を楽しみながら話していたらそろそろ寝る準備をする時間。かずくんがシャワーを浴びている間、着信がきた。通知が止まらないから気になってしまった。魔が差した。パスワードは知っている、私の誕生日、1、2、0、7―――――――――。  届いていたメッセージの相手を勝手にブロックして履歴もすべて消した。これでもう送られてくることはないだろう。サークルでふたりが直接話しているところも見たことないし、特に仲がいいわけでもなさそうだから少し安心した。私が近くにいたらわざわざ話しかけてくることも今後ないだろう。  だってわたしたちは、隠れて付き合ってるんだから。
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