窓は閉まっているのに

1/1
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ

窓は閉まっているのに

 戸締りをし、窓の外はカーテンで見えないはずなのになぜか視線を感じた。 長い時間を一緒にいた人と別れた。 人と別れるのは、一緒になる時よりもエネルギーを要するとは 本当のことのようだ。  別れたその日はなんとなく疲れてぼーっとしていた。 夜になり、お風呂に入り食事を済ませた後。 寝る前の空いた時間に感じた違和感。  しっかりと戸締りはしてある。 カーテンも閉まっていて外からは見えないはずなのに、 なぜか強い視線を感じた。 まるで何かに覗かれているかのような視線。    一瞬武者震いをした後、思いきってカーテンを開けて窓の外を確認する。 誰もいない。 1階では無いのでベランダ越しに外から誰かが覗き見ることは出来ない。 インターホンのモニターで玄関の外を確認。 そこにも誰も映っていない。 その日は気持ち悪くなって、すぐに寝ることにした。  数日後。 このことをある人に話すと、言われた言葉。 「それ、別れたその人が気持ちを飛ばして本当に見てたんじゃないの」 別れたその人はあまり自分のことを話す人では無かった。 だから本当に心配していたかどうかは分からない。 しかし、薄寒い思いをしたことだけは確かだった。 強すぎる念。 それは本人が意図しないところで どこかに何かを飛ばしてしまうようだ。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!