エピローグⅡ 私たちの弔い合戦 ※鳥居真希視点

5/6
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
 待ち構えるのは小学生三人と朱里の父親と杉原弁護士。朱里の父親を見て、私のお父さんに似てるなと思った。見た目じゃない。仕草とか話し方とか。  朱里の母親がDVを理由に弁護士を通して接近禁止を通告させたと言うけど、実際、朱里によればDVされたことはないし、父親が母親にDVしているところを見たこともないそうだ。  私のお父さんがやられたこととまったく同じ。全部岡室弁護士が仕組んだことに違いない。  悠が朱里の父親に、  「私のお父さんによく似ていてびっくりしました」  と話しかけていて、こんな切迫した場面なのに笑ってしまった。朱里が父親の家に戻れば、私たち三人はそれぞれ違う小学校に通うことになるけど、私たち三人がこれからずっと大人になっても友達でいられることをそのとき確信した。  朱里の母親は一言で言えば私の母親とよく似ていた。浮気しているかどうかは知らない。見た目が美しく、勝ち気でどこか夫を見下した態度がかつてのあの人の姿を思い出させて、私を不快にさせた。  岡室春子は高そうな服を着て、いいものばかり食べてるからか写真で見るより太っていた。彼女の着てる服も食べてるものも、もとは全部離婚家庭から搾り取ったお金。そう思うと吸血鬼か何かに見えてきて、背筋が寒くなった。  警察署の一室を借りての話し合い。警察官も二人同席している。うち一人は若い女性警官。  「その子たちは何なの? 部外者は出て行って!」  朱里に並んで座る私と悠を見て、朱里の母親がさっそく吠える。  「二人とも朱里の大切なお友達だよ。気に入らないとぎゃんぎゃん吠えるお母さんのそういうところ大嫌い!」  自分の言いなりだったはずの朱里から思わぬ反撃を食らい、朱里の母親は怒りの矛先を夫に変えた。  「誘拐で告訴ってどういうことなの? あなた、朱里を言いくるめるのはやめて下さい!」  最初から朱里の母親は喧嘩腰だったけど、  「言いくるめる? 朱里を言いくるめて僕に黙って連れ去った君にだけは言われたくないな」  父親のその一言でしどろもどろになった。  「言いくるめるって、私はちゃんと朱里の同意を得た上で……」  「お母さん、私は同意なんてしてないよ。〈もうお父さんとは暮らせない。朱里も早く持って出る荷物の準備をしなさい〉としか言われてないもん」  「朱里、お母さんを裏切るの?」  「裏切るも何も、お父さんとお母さん、どっちかを選べと言われたって選べないよ。どうしてもと言うならお父さんを選ぶ。それなら前の学校にもまた戻れるしね」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!