イブの夜

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「みんな楽しそうっていうかすごく賑やかですね」 「だな、やっぱりクリスマスだからかな?」 ドクターらしくペーパータオルできっちりと手を拭きながら、ぐるりと周りを見渡している。店内にはアップテンポなクリスマスソングが流れているけれど、それがかき消されてしまうくらいとても賑やかだ。 手を拭き終わった先生はメニューを開くと、私に見せてくれた。 「遠慮せず好きなだけ何でも頼んで。肉でも魚でもパスタでもデザートでも」 ありがとうございます──と微笑んでメニューのページを捲っていく。最近はタブレット注文やロボットが料理を運んでくれるファミレスが増えたとニュースで聞いていたけれど、どうやらここはメニュー表を見て店員さんに注文するシステムのようだ。仕事を始めてからはファミレスに行く機会もほとんどなくなったので、メニューの多さにびっくりしてしまった。 中からとろりとチーズが流れ出すハンバーグや、厚切りのサーロインステーキ、こんがりとグリルされたチキンにハッシュドビーフソースのかかったふわとろのオムライスなど、どれにしようか迷ってしまうほど美味しそうな写真が並んでいる。 「あー、どれにしよう。迷っちゃう……。先生は何にされますか?」 「俺? 俺はハンバーグ」 あっさりと即答されてしまい、私はメニューから視線を外して顔を上げた。 「もう決めてらっしゃるんですか? メニューも見てないのに?」 「さっき入口の写真見たら美味しそうだったから」 イケメンだということは十分にわかっているつもりだったけれど、明るいファミレスの店内では結城先生の端正な顔立ちはさらに際立っていた。 爽やかな笑顔を向けられて、胸の奥がほんの少しトクンと疼く。 「そ、そんな写真ありました? 全然気づきませんでした。じゃあ私もハンバーグにしようかな」 慌ててメニューに視線を戻し、ハンバーグのページを開いてどれにしようかと考えるけれど、全然内容が入ってこない。先生と病院の外で会っているせいなのだろうか。先生の笑顔を見た途端、急に落ち着かなくなるなんて──。 今日の私はなんだか変だ。
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