epilogue.私達の結末➖イヴと子供達

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 目一杯遊んで貰った双子達は、ハンモックの上で昼寝している。  陽射し避けの大きな(パラソル)があるテーブルに、イヴとツァールトハイトは向かい合って座った。  そうして、ツァールトハイトは今日もどこか嬉しそうに頬杖をつき、イヴを眺めては微笑した。  ローズブロンドの髪が陽射しに透けて、美しく輝いている。    「ツアールトハイト。  貴方、いつになったら結婚するの?  あの大帝国、バーリッシュの皇帝がこんな場所で寄り道している暇なんて、ないはずよ。」  イヴは相変わらず、ツァールトハイトには素っ気なく接した。  ずっと彼の幸せを願っている。  こんなに良い皇帝の心を乱すような、そして平和になった帝国に害を招くような、そんな存在は彼には必要ない。  自分達はただ息を顰め、この国でひっそりと生きていく。  子供達に本当の父親の名を明かす事も、自分の正体を明かす事もない。  リアはイヴとして生き、イヴとして死ぬ。  永遠にバーリッシュ帝国に戻る事はない。  そう決めている。  「うん、そうだね。」  それなのにツァールトハイトは、今日も全く心折れずに、イヴに優しく笑いかけた。  それが日常の一部であるかのように。  「イヴ。  俺の妻の座は、相変わらず空席のままだよ。  その座に、ホワイトブロンドの髪と、ターコイズブルーの瞳をした、どこかの綺麗な人が座ってくれるのをずっと待っているんだけどなあ。」  飼い主からの愛情をじっと待っている飼い猫みたいに、ツァールトハイトはイヴを熱い眼差しで見つめた。  「ツァールトハイト、だから私は……」  「迷惑なんだよね。でも俺、諦めだけは悪いんだ。  だから、イヴ。皇后の座はずっと空いてるよ。  帝国は今、驚くほど平和なんだ。  それに君の可愛い子供達がもし皇宮にきてくれたら、俺の子として大切に育てるよ。  君を愛するのと同じくらい、愛する自信があるよ。」  ツァールトハイトに熱烈に誘惑され、イヴは途端に顔を背けた。  こういう性格は案外、ヴィンセントとそっくりなんじゃないか、と思う。  彼と半分血が繋がっている証だと嫌でも実感してしまう。  「ねえ……イヴ。  愛してるよ。  君の気持ちが俺に傾くのを、ずっと待ってる。」    「ツァールトハイト……」  いかにツァールトハイトが忍耐強く、そして皇帝でありながら人の気持ちを尊重する人か、イヴにはよく分かっている。  手に入れたい人を無理やり自分のものにしたり、強制的に婚姻関係を結ばせたりしない。  ツァールトハイトはイヴが自分に振り向いてくれるまで、ずっと待つつもりだ。  そんな彼に戸惑うイヴだが、やはり今日も彼の誘惑を断り続ける。  だってイヴは。  ……リアは今もずっと、ヴィンセントを愛しているから。  それはこれから先も変わらないだろう。  子供達が大人になり、それぞれ自立したらもうリアも思い残す事はない。  その時は、ヴィンセントの待つ地獄へいけるだろう。  だが今は駄目だ。今はまだ…………  それにツァールトハイトがいるうちは、簡単にはその場所に逝かせて貰えなさそうな気がする。  「そんな風に冷たく突き放しても分かってるよ。  イヴ。君が本当は優しい人だってことは。  だから、言ってるだろ?  君は演技が下手だって………」  「ええ?一体どこが下手なの………」  そう言って微笑するツァールトハイトとイヴは、ごく自然に、いつまでも談笑を続けた。    【完結】  最後までお読み頂き、ありがとうございました。  リア…(語源・ヘブライ語)疲れた  ツァールトハイト…(ドイツ語)優しさ  ヴィンセント…(語源・ラテン語)征服する  イヴ…(語源・ヘブライ語)生きるもの  ファルシュ(ドイツ語)偽物  ヴィンス…ヴィンセントの略称  アヴァ…(英語)生きるもの
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