臓物少女戦隊・ゴゾー☆ロップス

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臓物少女戦隊・ゴゾー☆ロップス

○ジンタイタウンの桟橋   暴れ回る怪人・ンガー。   悲鳴を上げるカップル。   そこに颯爽と現れる変身前の少女達。 ンガー「グハハハハ!傷付いた遺伝子を変化させてやるンガー!!」 少女「そこまでよ!」 ンガー「なぬぅ!?貴様は……!」   変身する少女達。   それぞれ決めポーズ。 心臓「指の先まで適度な拍動(ビート)!心臓レッド!」 肺「たまにはいいえとローテンション……肺ブルー。」 肝臓「顔色黄色はレッドカード!?肝臓イエローなのです!」 脾臓「脾臓の写真がーマヂ秘蔵写真ってカンジぃー。脾臓ピンクだけどー?」 腎臓「「片方欠けても頑張ります!腎臓ブラック!」」   人体模型のイラストをバックに決めゼリフ。 少女達「私達!臓物少女戦隊・ゴゾー☆ロップス!」 「いやいや、何?どういうこと?理解が追いつかないんだけど。」  読みかけの脚本を目から離して、友人・シンゴはそう言った。うーん、辛辣だ。 「まだ途中なのに、もうダメ出し?何がダメなんだよ。」 「いや……いやいや、何がって……。」 「あ!ダメ出しじゃなくて質問でもあるのか?女の子達のスリーサイズや秘密くらいなら考えてあるから、好きなだけ聞けよ。特別に答えてやるからさ。」 「逆にスリーサイズと秘密しか考えてないのか?」 「大丈夫だ、今から補うから。」 「アドリブで答えるってことかよ。まあいいや、聞かせてくれ。」  アイスカフェラテを飲んで、彼の質問に耳を傾けた。さあ、どこからでもかかってこい。僕の天才的センスにかかれば、悩める凡人を感動させるなんてお手の物だ。 「まず、どうして桟橋から始まるんだよ。ンガーのキャラ原案も見たけど、かなり重そうな鎧を着てたよな?絶対、海に落ちたら死んじゃうだろ。」 「だって、悪役には確実に死んでもらいたいし。」 「それはわからなくもないけど、ンガー自ら来てるのは自殺行為じゃないか?」 「ンガーは実年齢三十六歳にして(自主規制)レスだから、カップルに妬いちゃったんだよ。」 「少女達より設定凝ってない?これから海に沈められるのに、そのボリュームで大丈夫?文字通り水の泡になるぞ?」 「大丈夫!物語に犠牲はつきものなんだ。」  それを聞いたシンゴはジト目のまま、パンケーキを頬張った。 「まずって言ってたけど、他にもあるのか?」 「ある。戦隊モノの最初のセリフが"傷付いた遺伝子を変化させてやるンガー!!"って何?その時点で思考停止したんだけど。」 「だって、回りくどいの嫌いだもん。ほら、レポートでタイトルをつけるのと同じ感じで、ンガーの目標をしっかりと視聴者に伝えるんだ!」 「うーん……そうか……?あとさ、心臓がレッドなのはまだしも、それ以外の色がおかしくない?」 「臓物そのままのイメージを使うと全員レッドになっちゃうし……。」 「否めないけど元も子もない。イメージカラーをつけない方が良いんじゃないのか?」 「やだやだやだ!!色を決めれば、レッドは主人公でブルーはクールな相棒っていちいち言わなくても伝わるから楽なんだもん!」 「それでも脚本家志望かよ。あと肺ブルーの語呂が悪い。」 「お、肺ブルーだけピックアップとは……推しになりそうなの?」 「違う。キャラ原案に書いてあった、"メガネの代わりに水泳ゴーグルを着けている。"を見たときから関わりたくないと思ってた。セリフは、はいだけにいいえ、ハイだけにローでちょっと面白かったけどさ。」  頑張れば、肺ブルーを推してもらえそうだ。僕は肺ブルーの魅力が沢山詰まった話を、十話分ほど書こうと決意した。 「あと、脾臓ピンク。色変えた方がいいと思う。」 「なんで?」 「口調的にギャルっぽいし、ギャルでピンクというとちょっと……。」 「そういうのは同人誌でやれっ!公式では、実は純粋で泣き虫で可愛い脾臓ピンクを推してるからな。」 「可愛い奴の秘蔵写真が脾臓でたまるか。」 「そこが可愛いんだろ!」 「もう価値観合わないよ、お前と……!」  うーん、残念。シンゴにはこの作品を推してもらいたかったのにな。でも、まだ魅力を伝えればわかってくれるかも。 「それに腎臓!ブラックって、急に彩度落ちすぎだろ!」 「二色が重なってドス黒くなるんだ。」 「え、闇堕ちするの?というか、この二人は姉妹?」 「ふっ、実は片方が男の娘の双子だ。闇堕ちはどっちかにさせようと思ってるんだけど、これが中々悩ましくてなー……。」 「"片方欠けても頑張ります"が伏線だったか……。ってか、そもそも。」 「ん?」 「なんでゴゾー☆ロップス、つまり五臓六腑が元ネタなのに、五臓だけで六腑がいないんだよ。」 「と、途中参加なんだ!二話から一人ずつ出てくる!」  僕は第二話の脚本を隠した。五臓六腑という言葉は、カッコイイから使っているだけである。意味など知らなかったし、ロップはロップイヤーの親戚だとばかり思っていた。 「カオスだな。ツッコミ役はいないのか?」 「え、ボケ役居ないしそりゃそうだろ。日常コメディチックな少女戦隊じゃなくてさ、日々が不穏に満ちた世界観なんだよ、ここは。」 「ええ?それにしては変身シーンがポップだな。」 「一部だけでもポップにしないと、視聴者が着いてこられないから……。」 「タイトルの時点で誰も着いてきてないから、安心しろ。ところで、戦隊モノのヒーローをただ少女に置き換えただけに見えるけど……マスコットキャラクターとかは考えてるのか?」 「マスコットキャラクターは考えてある!臓物妖精のロップ・ゴゾウくんだ!」 「臓物妖精ってなんだよ、生理的に無理!!」 「……って、よくよく考えたら臓物少女も何!?もう何もかもがわからない!!」
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