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ほくほくとした様子で2人が笑った。
賀上くんは、紗也華とアンナさんが近くにいるのをわかっていたのかいなかったのか、顔をほんのり赤く染めている。
「じゃ、私は旦那が待ってるし、そろそろ家に帰ろかな~」
「あ、私も。早く打ち上げ行こーっと!」
「じゃあまたね!」と笑顔で言うと、紗也華とアンナさんは2人で手を振り去っていく。
「あの・・・!」と、呼び止めるのもままならず、2人の姿はすぐに見えなくなってしまった。
「・・・」
「・・・」
私と彼は、少しの間呆然となって立ち尽くす。
なんとなく、2人で顔を見合わせて、お互いに、照れくさいような感じになった。
「・・・えっと・・・、よかったら、オレたちもどっかで飲んで帰りませんか」
賀上くんが誘ってくれた。
このまま帰るのは寂しいし、一緒に飲みに行けるのは、とても嬉しく思うけど・・・。
「賀上くんも、みんなとの打ち上げがあるんじゃないの?」
「ああ・・・、けど、今日はもう行かないって伝えてあるんで。大丈夫です」
「・・・そうなの?・・・じゃあ・・・」
もしかして、私のために断ってくれていたのかな。
そうだとしたら申し訳ない気持ちもするけれど、一緒にいられる時間が増えるのは、やっぱり嬉しいなと思い、私は「うん」と頷いた。
「ここらへんのお店、私はあんまりわからないんだけど・・・」
「ああ・・・、オレの知ってる店でよければ。焼き鳥メインですけど・・・、結構美味いです」
「わ、焼き鳥、好き」
「ほんとですか。よかった。じゃあ行きますか」
「うん」
頷いて、ふっと周りに目をやると、私と彼にファンの女の子たちの視線がたくさん注がれていた。
「誰?」「もしかして、新しい彼女?」という興味の視線や探るような声が聞こえる。
(・・・・・・)
やっぱり、こういう感じはとても苦手だ。
今すぐに、逃げ出したいって思ってしまう。
似合わないって思われてるんじゃないかとか、私でいいんだろうか・・・とか、様々な不安が顔を出す。
ーーーだけど。
もう、覚悟をするって決めたんだ。
・・・大丈夫。
怖くて仕方がないけれど。
どう思われてしまったとしても・・・、私はもう、大丈夫。
すうっと息を吸い込んで、ゆっくりそれを吐き出した。
そして私はうつむきかけた顔を上げ、彼の横を、並んで歩いた。
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