〜*〜*〜プロローグ*〜*〜

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〜*〜*〜プロローグ*〜*〜

 〜*〜*〜プロローグ*〜*〜       都心から電車で一時間ほどの横浜にある閑静な住宅地。  『チュンチュン』とスズメが鳴く爽やかな朝、高台にあるレンガ造りの二階建ての喫茶店『フェアリー』では毎朝同じ光景が見られる。   「リリー、おはよう。今日も沢山食べてね」  半年前亡くなったボーダーコリーのリリー。  リリーの好物だったバタートーストとミルクを遺影の前に供え、小さな仏壇に手を合わせる。  一緒に生活している時には、自分が食べる物をほんの少しあげていた。 「今はたっぷり食べられるね」  少しすると、ガタガタと物音が聞こえてきた。 「いっくん おはよう。リリーおはよう」  身支度を済ませ、ダークスーツの上着だけを手に持って近づいてくるこの男の名前は榎本葉月(えのもとはづき)二十六歳。   190センチ近くの長身、細身ながら筋肉質な身体。  キリッと締まった顔立ち、毎日見ていても二度見する。   「おはよう葉月くん」  と言うのと同時に葉月が頬に『チュッ』とキスをしてくる。    軽く頬が赤らんでいるもう一人のこの男 香山樹(かやまいつき)二十八歳。  身長は170センチを少し超えるくらい。  色白で切れ長の目に細い手足、肩に掛からないほどの薄茶色の髪。  パッと見女性にしか見えない。    上着をソファに掛け、ダイニングテーブルに座ると用意してあったコーヒーを飲みだした。  葉月は、動きが鈍くなるからと言い、朝はコーヒーだけを飲んでいく。 「葉月くん、今日遅い?」  樹が唐突に聞いてきた。 「ん? うん。っていうか当直だよ、勤務表スマホにに送ったでしょ?」 「あ、そうだよね。ごめん」 「いいけど……何で急に?」 「何でもないよ」  葉月は、ここから車で二十分程走った先の大学病院で外科医をしている。  月に数回の当直とたまに緊急の呼び出しがある。   「じゃあ 行ってくるね」 「いってらっ…」  『チュッ』  今度は唇にキスをする。  一緒に住みだした……というか、葉月がここに転がり込んできて半年程が過ぎたが、樹は自分がこんなにデレた生活を送る事になるとは全く予想していなかった。 .    ・*・.・*・.・*・.・*・.・*・.・*・.・*・.・*・.  ここは祖母が一人で切り盛りしていた喫茶店。  小さい頃は夏休みに兄の椿とよく遊びに来た。  祖母が亡くなってからは閉めていたが、この家をどうするかの親族会議が行われた時『誰かがここに住むか売却するか』という二択になった。  その頃の樹は、東京六本木にある兄の椿のパートナーの家に同居していた。  椿が夜仕事のため家を空ける代わりにその息子『楓』の面倒を見ていたが、近くにリリーを思い切り走らせる場所はなかった。  楓のことを考え、暫く悩んだがここで祖母の後を継ごうとリリーと越してきてた。 「ここならリリーに思い切り遊ばせてやれる」  と思ったからだ。   
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