愚者のギルド

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愚者のギルド

 街路灯にほのかに照らされた街の大通りから薄暗い路地に入ると、そこは幾つもの小道に分かれた迷路になっていた。  シルクハットにタキシードの装いの紳士が、その折れ曲がった小道を右に左にと足早に歩を進めていた。  紳士は自分の前を、ベルベットドレスを着た妖艶な女が歩いていることに気づいた。  後ろからそっと近づこうとした瞬間、その女は目の前から姿を消した。 「何をしているの……アルコ」  いつの間にか背後に回った女の持つナイフの刃先が、ひんやりとアルコの首元を触れていた。 「おいおい、ただ声をかけようとしただけだよ」  冷や汗を垂らすアルコはおもむろに手を挙げ、降参の素振りを示した。 「ふん、どうせまた変なところでも触ろうとしたんじゃない?」 「冗談が通じない女だな。ラウナ、お前も呼ばれたのか」 「ええ、マスターが危篤だとリコスから伝書があったので」  そう言ってナイフをしまおうとしたラウナだったがそれは手元から消え、アルコを見ると、ふふんと鼻で笑いながらナイフを指先で回していた。 「これでおあいこだな」  地下に繋がる石積みの階段を二人で下りると、暗がりに潜む古びた扉をコンコンと五回叩いた。  しばらくすると扉に近づく足音が聞こえ、ガチャリと扉が開くとその隙間から道化師の格好をした青年のニタリと微笑む顔が浮かび上がった。 「いらっしゃい、お二人さん」  青年は右腕を前に出すと、深々をお辞儀をした。 「リコス、それで……マスターはどうしている?」 「あちらに座っておりますよ」  アルコは扉の先に目をやると、花柄服を着た老人が円卓の奥で白いオダマキの花を左手で揺らす姿があった。 「健在じゃないか。リコス、また貴様の大嘘か……!」 「こうでもしないと、気まぐれな二人を呼び寄せることができないからね」 「お前達、何をしている。早く中に入れ」  老人は花を持った手をくいと上げると、三人を席に誘った。  その合図に合わせて三人は円卓の席に座ると、中央に置かれたランプの灯が四人の陰をゆらゆらと妖しく壁に映した。 「マスター、お久しぶりです。それで……我々三人が呼ばれたということは、何か重要なクエストでもあるのですか?」
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