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   二人でちゃんと考えて、決めた結婚式場。  それぞれのドアから入場して、ご神父様の前に二人で並ぶ。  幼い頃に、半ば勢いでした約束(プロポーズ)。  それが、私をこんなところまで連れてきてくれたんだ。  感慨深い気持ちが喉元までせり上がってきて、私はひそかに、色々な思い出を胸の奥にしまう。  強いて言うなら、蒼空にプロポーズしてもらいたかったかなぁ。あの時は自分からだったし。  そんなことを考えているうちに式は進み、最後の儀式の時間になった。  ご神父様の優しげな声がチャペルに響く。 「あなたは、喜びのときも、悲しみのときも、共に助け合い、この者を愛し続けることを誓いますか」 「――はい、誓います」  蒼空の、低くて頼もしい声が隣から聴こえた。    これから私は、人生で一番大切な約束を交わす。  今度は、これから蒼空と紡いでいく、明るい未来のために。 「あなたは、健やかなるときも、病めるときも、この者にその命ある限り真心を尽くすことを、誓いますか」  ご神父様の瞳が私の方を向いた。  私はたっぷり息を吸って、はっきりと、自信をもって宣言する。 「はい、誓います」  互いに向き直り、目を閉じた私に、蒼空が近づいてくる――。  蒼空と重ね合わせていた唇を離すと、私のが、私にしか聞こえないような小さな声で言った。 「好きだよ、茉奈。俺と一緒に、幸せになろう」 「……っ!!」  それは、十年前たくさん言ってくれたものとは少し違う、で。  自分の顔が赤くなっていくのがわかった。  ――もう、バカッ。  それ、完璧、プロポーズするときに言うヤツじゃん。私たち、もう結婚してるんだけど。  さっき式中に考えていたことが見透かされたみたいで、恥ずかしくって。  でも、私は満面の笑みを浮かべて、小声で返す。 「もちろん。よ」 「ああ」    この約束は、この約束だけは、誰にも引き裂けない。邪魔できない。  みんなから祝福の拍手をあびながら、私はそっと、隣に立つ夫と微笑みあった。 (fin)
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