最後の授業

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ああ……また……だ。 ガタガタッ! ガシャーン!! 勢いよく立ち上がり、椅子を力任せに蹴り倒す音が教室中に響く。 「うるっせーな! 文句ばっか言うんだったら、お前がやれ!」 彼が怒りを込めて床に叩きつけた鉛筆が、跳ね返って近くに座っていた女子児童の腕をかすめ、彼女が静かに泣き出した。 窓から降り注ぐ陽光。 秋も深まった午後。 外の風は冷たくなって来たものの、ガラス越しの教室はポカポカと暖かい。 窓際に座った児童が、背中に暖かな陽射しを浴びて欠伸(あくび)をした時に、それは起こった。 小学5年生の教室。 席の近い5人程度が机を向かい合わせに並べて、作業をするグループ学習。 理科の実験、家庭科の実習。 役割分担を決め、協力しながら作業を進めることは、授業の中でよくある事だ。 今日は、社会科見学で自動車工場に行く前の話し合い。 工場の従業員にする『質問』を一人ずつ出し合い、グループ内の一人が用紙に書き込み、まとめるのだ。 「どうしたの?」 私は、彼の居るグループの近くに行き、声を掛ける。 机に肘をついて怒りを滲ませる男子児童。 目を潤ませ、唇を噛む女子児童。 班長の男子児童、理貴(りき)が私に訴えるように口を開いた。
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